
瓦屋根の耐用年数は?種類別の違いと寿命を延ばすコツ・メンテナンス費用を解説
昔から瓦屋根は、日本の屋根にはなじみ深く広く使用されています。読者様の屋根もそうかもしれませんね。ですから瓦屋根についての基本的な情報を得ておきたいと思われるでしょう。
瓦屋根の基本情報として、種類が大まかに分けて3つほど存在していることや、それぞれに特徴があり耐用年数も違っていることが挙げられます。
では、それぞれの瓦屋根の特徴や耐用年数はどれくらいでしょうか。また寿命を延ばすコツはなんでしょうか。そしてメンテナンスにかかる費用はいくらなのでしょうか。
本記事はそれらの点を分かりやすく説明していきますので、最後まで読んで参考にしてください。
瓦屋根の種類別の特徴と耐用年数
瓦屋根の3つの種類について、その特徴と耐用年数を紹介していきます。
和瓦
和瓦には、釉薬瓦と釉薬を施さない粘土瓦に分けられます。
釉薬瓦(ゆうやくがわら)は、粘土に釉薬と呼ばれる薄いガラス質でおおい、高温で焼き上げた瓦です。
瓦を覆う釉薬が水分が浸透するのを防ぐため、防水性が高くまた色褪せを防止し耐久性を与えます。
また釉薬のガラス質は美しい光沢を出し高級感を演出するため、日本の伝統的な美しい屋根を代表してきたといえるでしょう。
粘土瓦は、釉薬をかけずに1000度の高温で焼き固められた瓦で、非常に硬くて耐久性があります。日本三大瓦のひとつである愛知県の「三州瓦」が代表的です。
粘土瓦の良さは、通気性が良いことと、また湿気の吸水性が高いことです。そのため湿度の多い地域でよく使用されています。
・耐用年数
釉薬瓦も粘土瓦も、耐用年数は50~100年ほどで、瓦そのものには塗装やメンテナンスは不要です。
ですが瓦の寿命は長くても、他の屋根材は10年ほどで、劣化が進んできますからメンテナンスが必要になってきます。
和瓦について以下の記事も参考になります。
セメント瓦
セメント瓦は、セメントが主成分で砂と水を混ぜて成型し、焼かずに自然乾燥などで固めて作られています。
セメント瓦は重さがあるためズレることはあまりなく、耐火性に優れています。
そして、デザイン性があり色も豊富なことから、戦後の日本の高度成長期を住宅面でささえ貢献してきた屋根材といえるでしょう。
しかし、色あせしやすく割れやすいという耐久性の低さから、近年ではあまり使用されなくなりました。
・耐用年数 20~30年です。
セメント瓦についての以下の記事も参考にしてください。
スレート屋根
スレート瓦は、瓦と表現されていますが、施工の仕方の違いのため瓦の部類に属しません。しかし日本の住宅に使われる普及率の高さを考慮して記事に含めたいと思います。
スレート瓦は、セメントに繊維質を混ぜて成形したものです。
薄くて軽く施工も簡単なうえ価格も手ごろで、さらに和風にも洋風にも適しているスレート瓦の魅力は、広く普及した理由といえるでしょう。
しかし、薄さから割れやすいので耐久性は劣り、色あせしやすく防水性が低下しやすい点がデメリットです。
・耐用年数
20〜30年程度で、定期的なメンテナンスが必須です。
スレート瓦についての詳細が記述されています。以下の記事も参考にしてください。
瓦屋根に関する詳細な参考記事です。参考に読んでみてください
瓦屋根の寿命を縮める要因
瓦屋根は比較的寿命が長いものが多いので、耐用年数を十分に満たして大事に使い続けたいものですね。
また「耐用年数」とは、瓦が問題のない状態で使える年数のことをいいます。それを過ぎるとどうしても経年劣化の影響を受け、さまざまな弊害が生じてきます。
しかし経年劣化による自然な寿命以外の理由で、瓦屋根の劣化を進めて寿命を縮めてしまう要因があるのです。
その要因とはどんなことでしょうか。以下に5つの点を解説していきます。
瓦のズレやひび割れ
地震が起きたり台風などの強風を受けたりして、瓦と瓦の間にズレが生じ、酷い場合はひび割れが起きることがあります。
するとその隙間から雨水や日光が直に入り込んでくることで問題が発生してくるのです。
瓦の下にはルーフィングという防水シートで覆われ、屋根の下地を腐食から守っています。しかし、入り込んだ雨水や日光によって防水シートの劣化が早まりボロボロになると、屋根材が水分を吸ってしまい腐食してしまう事態が生じます。そうなると寿命より大幅に短い期間で、瓦屋根を新しくするための大々的な工事が必要となってきますので要注意です。
酸性雨による浸食
酸性雨は、大気中の化学物質と雨の水と反応して生成され、工場地帯に多く見られる現象です。
酸性雨は有害な影響を及ぼし、瓦の素材に化学反応を起こさせ、瓦の表面を浸食してしまいます。
とくに、セメント瓦や釉薬瓦は酸性雨に弱く、徐々に表面が剝がれていき劣化が早まります。その結果、寿命より早く耐久性が落ち、瓦の機能が損なわれてしまうでしょう。
塩害
その名のとおり海に近い場所で起こる現象で、海から来た風や雨の塩分で、瓦の表面が腐食しひび割れなどが生じます。また塩害がすすむと、瓦の内部まで劣化させることもあり瓦の寿命を縮めてしまいます。
コケ・藻・カビの繁殖
湿気が高いと、コケ、藻、カビが瓦の表面に繁殖し付着しやすくなります。
さらにそれらが付着することで、湿気が一層保たれてしまうという悪循環を繰り返し、結果として瓦の防水性を弱め、劣化を早めてしまいます。
塗装の剥がれ(セメント瓦・スレート瓦)
セメント瓦やスレート瓦は表面に塗装を施すことで、紫外線や水分から保護します。
ですから塗装の剥がれは、セメント瓦やスレート瓦にとって、命取りになるほど劣化が進み寿命を縮めてしまうでしょう。
雨漏りの発生
雨漏りは寿命を縮める重大な要因です。雨漏りがしてきたなら、早期に対処する必要があります。
前述した瓦のズレや割れが酷いと雨漏りまで発生しますし、瓦の下にある防水シートの劣化や破れも大きな原因です。
瓦がきれいだからと放置しておくと、表面に現れない屋根の下地や建物の躯体が腐食し、修理も大規模になり費用の負担も計り知れません。
瓦の寿命はまだあったとしても、建物に寿命がきて大変なことになってしまいます。
ですから、雨漏りは寿命を縮める致命的なリスクと認識し素早く対処しましょう。
瓦屋根の耐用年数を延ばすコツはメンテナンス
前章で「寿命を縮める要因」について解説しましたが、ほとんどの要素は定期的で適切なメンテナンスを行うことで十分に対処できることです。
瓦屋根が問題のない状態を保ち寿命を延ばすためには、定期的に点検し問題個所がないかを確認しておくことがコツとなります。
人間でも定期健診を行うことで、異常がないか確かめられますし、また重大な病気の早期発見につながり健康寿命を延ばすことになります。それは、瓦屋根も同様です。
もし、メンテナンスを怠り、問題個所を発見できず放置するなら、家の倒壊を招くほどの重大な結果を招くでしょう。
それで次の章では、瓦屋根の寿命を延ばすコツとなるメンテナンスの具体的な方法と費用をお伝えしたいと思います。
瓦屋根の耐用年数を延ばすメンテナンスの方法と費用
瓦屋根の耐用年数つまり寿命を延ばすために、メンテナンスは重要なことを説明してきました。
では、具体的にどんなメンテナンスの方法があるでしょうか。ここでは3つの方法と費用を紹介します。
部分修理で対処
瓦屋根に生じている問題が軽度の場合は、部分的な修理で十分です。
たとえば、瓦がズレている場合は、正しい位置に瓦を戻し釘を新しくして打ち込み固定します。
また、瓦にヒビがあるときは、コーキング材を隙間に注入して埋める処置を施します。
こうした軽微な修理は定期的な確認をしてこそ発見が可能です。また、修理費を安くすませられるでしょう。
費用相場は5万円〜15万円です。
セメント瓦とスレート瓦は塗装が必須
セメント瓦もスレート瓦も、セメントが主成分です。セメントは水分を吸収してしまう性質があるので、塗装によって瓦の表面に被膜をつくり防水性を保つ必要があります。
しかし、塗装による保護を失うと、セメントのカルシウムが溶け出してしまい、その結果、瓦はもろくなり耐久性を失ってしまうのです。
さらに塗装は紫外線を浴びることで生じる劣化を防ぎ、寿命を延ばす役割を果たしています。
塗装頻度は、塗料の寿命にもよりますが、7〜15年ごとに検討するのがおすすめです。
塗装の相場費用は、10万円〜40万円が目安ですが、塗料の種類などによって変動します。
瓦の交換
瓦が割れてしまった時は、割れた瓦だけを部分的に交換できます。
割れた瓦を放置すると、落下してしまい他の人に怪我を負わせたり、車や建物に被害が及んだりする可能性があり危険です。またその場合は損害賠償の対象になる場合もあるため放置は禁物です。
部分的な瓦の交換は、工事費用も安く抑えられますので、瓦の割れに気づいたら早急に対処することをおすすめします。
瓦の交換の費用相場は、1㎡あたり3万円〜10万円です。
瓦屋根が寿命を迎えた場合のリフォームと費用
葺き直し
葺き直しのリフォームは、屋根から瓦を全て降ろし、防水シートや野地板などの屋根の下地材を交換することです。
瓦が傷んでいない時に行われるため瓦を再利用でき、費用を押さえられます。
防水シートは瓦屋根の唯一の防水機能を果たす屋根材といえるため、劣化して破れたりボロボロになったりすると、屋根の下地材を腐食させてしまいます。
そうなると、建物自体に危険な影響を及ぼすことになるので注意が肝要です。
瓦以外の屋根材の寿命はおおよそ10年ほどですから、瓦に耐用年数がまだあっても、屋根材の交換リフォームを念頭に入れておく必要があります。
葺き直しの費用相場:1㎡あたり¥10,000〜¥15,000です。
葺き替え
葺き替えリフォームは、瓦と屋根の下地を全て新しくする工事です。
瓦が長い寿命を迎えた時には、下地も同時に劣化していることが多いので、葺き替えが必要になります。
また、瓦屋根を他の瓦にしたい時、たとえば軽量で耐震性に富む防災瓦などに変えたい時にも行われます。
葺き替えることで、屋根全体が新しくなるので、数十年は劣化の不安なく安心して過ごせのはメリットです。
葺き替え工事は大規模工事となり、屋根材の撤去、処分、足場が含まれるため費用は高額になります。
費用相場は30坪の家の屋根で、120万円から260万円の範囲とされています。
まとめ
瓦屋根の種類によって耐用年数は違ってきますが、定期的なメンテナンスでそれぞれの瓦の耐用年数を満たすだけでなく、寿命を延ばすのに役立つことをお伝えしてきました。
日本の美となる瓦屋根を大事に美しく保ち、安全に暮らしていくうえで、本記事がお役に立つことを願っています。