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モニエル瓦とは?長持ちの秘訣は塗装!注意点と費用も解説

モニエル瓦と聞くと、現在では馴染みが少なくなってきている瓦です。
ですが優秀で人気のある瓦屋根として一時代を築いてきました。

ではモニエル瓦には、一体どんな良さがあるのでしょうか?
そして塗装は長持ちの秘訣と言われていますが、塗装の際に注意すべき点はどんなことでしょうか?またメンテナンスの費用相場とはいくら位で、その業者選びにもポイントはあるのでしょうか?

この記事からモニエル瓦の特徴やメンテナンスについてご理解いただき、施工業者の方やモニエル瓦屋根を今も大事に使っておられる方々のために参考になればと願っています。

モニエル瓦とは?

モニエル瓦は1970年代から1980年代にかけて人気を博した瓦です。
ヨーロッパで広く普及しており、国内では洋風や和風の多様なデザインと、豊かな色のバリエーションで美しさを誇っています。

モニエル瓦は、日本では1973年に「日本モニエル」が輸入代理店となり扱っていました。
瓦の人気が高まったため、「モニエル」という社名が商品名として定着して現在に引き継がれてきました。

しかし、2010年に日本モニエルは撤退したため、現在はモニエル瓦は生産・販売はされていません。
ですが適正なメンテナンスで耐久性が持続するため、まだまだ現役で使われています。

モニエル瓦の正式名は「乾式コンクリート瓦」と呼ばれセメント瓦の一種です。

一見するとモニエル瓦とセメント瓦は、似ており専門業者でも見分けがつきにくいといわれています。
それで次の項目では判別しにくいセメント瓦との違いについて説明します。

モニエル瓦とセメント瓦との違い

主成分がセメント(コンクリート)という点は同じです。
ですが、セメント瓦がコンクリートと川砂でできているのに対し、モニエル瓦はコンクリートと砂利でできている違いがあります。

そのためモニエル瓦は、セメント瓦よりザラザラとしたデコボコ感があります。
またモニエル瓦には、裏面にMというロゴマークが刻印されているので確認できます。

そして瓦表面の処理が特殊な点も、セメント瓦と違っています。
モニエル瓦の製造方法を簡単に説明しますと、水分の少ないセメントを成型し、「着色スラリー層」という無機質着色材の塗膜を1㎜以上の厚さで塗装され、その後アクリル樹脂やクリアー塗装を施して仕上げています。
こうした瓦表面に施される特殊処理のため、モニエル瓦は施工しやすく耐水性も高いといった長所があるのもセメント瓦との違いです。

しかし両方とも主要成分がセメントなので、瓦自体に防水性能がなく塗装が必須となります。
防水性がなくなることは劣化が起きる大きな原因になるため、塗装は長持ちさせるための秘訣といえるでしょう。

また別の違いとして、2004年以前に製造されたセメント瓦の一種であるスレート瓦には、補強のためにアスベストが含まれていましたが、モニエル瓦には一切使用されていない点が挙げられます。
このアスベストの健康被害と訴訟問題は周知のとおりです。

さらに大きな違いはモニエル瓦の特徴で瓦表面の特殊処理の一つである着色スラリーの使用です。
着色スラリーは色彩が豊かでおしゃれなものにする役割がありますが、メンテナンスで塗装する際には厄介な注意点といえます。
この点については「塗装の注意点」の項目で記述します。

モニエル瓦が人気だった理由(2010年以降は生産されていない)

モニエル瓦が生産されなくなったのは、モニエル瓦の性能に問題があった訳ではなく、企業が撤退して生産中止になったためです。
それまでは品質や性能がよい瓦として評判の良いものでした。

モニエル瓦が人気だった理由を下記に記述します。

・遮断性や防音性に優れている
・デザイン性が高く色彩も豊富にある
・耐用年数が長い
・重量と耐震性

遮熱性や防音性に優れている

モニエル瓦は素材が頑丈という利点のため、夏場の暑い日差しを屋根で受け止めてくれるので高い遮熱性があります。
同時にその丈夫さゆえに、雨や雑音も気にならず防音性にも優れています。

デザイン性が高く色彩も豊富にある

モニエル瓦は様々なデザインに施工しやすく、和風にも洋風にもできる多様性があります。
またモニエル瓦の特徴である着色スラリーの利用で、色彩も多くバライエティ豊かな屋根材です。

耐用年数が長い

スラリー層の塗装メンテンナンスをしっかり行えば、塗装後の仕上がりも非常に美しく長く使い続けられる優秀な屋根材です。
やはり塗装が長持ちの決め手で、耐用年数も40~50年と長く延びるので、生産販売されてなくても今も現役で使われている理由です。

重量と耐震性

耐震性は屋根材の軽さに比例します。軽ければ軽いほど耐震性は高くなるのです。
屋根材の中で一番軽量なのが金属屋根で、重さは1㎡あたり約5㎏と軽く一番耐震性が高いといえます。

いっぽうモニエル瓦は1㎡あたり約43㎏あり、金属屋根の約8倍もの重さがありますので金属屋根に比べると耐震性は高いとはいえません。
ですが和瓦の重さは、1㎡あたり45~60kg程もありますので、和瓦に比べると軽量なため耐震性に優れているといえるでしょう。

モニエル瓦に生じる劣化症状

モニエル瓦は10年前後がメンテナンスの目安となる時期です。遅くても15年頃までには塗装を必要とします。
なぜなら、ちょうどその時期に紫外線や風雨にさらされて劣化が始まり傷みだすからです。
下記に劣化した場合に見られる状況について詳しく説明していきます。

・色褪せ
・カビ・コケの繁殖
・ビビ割れ、欠落

(汚れたモニエル瓦)

・色褪せ

モニエル瓦は、新築時や塗装の直後などは綺麗な色づきを呈していますが、日々の紫外線や風雨で着色スラリーが弱ってきて少しずつ色が抜けてきます。
もし遠くから自宅の屋根が見えた時、色あせた感じやぼんやりした色に見えだしたら、専門の業者に点検が必要な合図と見なせます。
そのままにしておくなら、モニエル瓦の主成分のセメントが水を吸い込み続け瓦の強度が落ちボロボロになってしまうからです。

それで色あせが出始めたら防水性が弱ってきていると判断でき、耐久性が低下する前に塗装メンテナンスを行う必要があります。
そうした塗装で再びモニエル瓦の美しさを取り戻しましょう。

・カビ・コケの繁殖

カビやコケも瓦の防水性が切れた時に発生します。
モニエル瓦が水分でジメジメしてくると、カビやコケの胞子が付着し根付きます。
瓦の表面に黄色から茶色っぽいブツブツがある時、その正体はカビやコケです。
茶色っぽくなるのは屋根の上では日当たりが強いため乾燥し仮死状態になるからで、梅雨場には緑色に復活していることがあります。

そうしたカビやコケをそのままにしておくと、瓦の内部にまで根を張りだし、常時水分がある状態にしてしまい、モニエル瓦の主成分であるセメントをもろくし、ひび割れしやすくなります。
またそれだけでなく、防水シートや野地板まで水が回り腐食させてしまう恐れがあります。
カビやコケも要注意ですから、高圧洗浄で落とせるような段階で早めに塗装メンテナンスを行いましょう。

・ビビ割れ、欠落

モニエル瓦は厚みが1cmと厚いため、ひび割れは生じにくい瓦として評判が高いです。
しかし前述したようにモニエル瓦の塗膜が損なわれて防水性が失われると、水分を吸収しやすくなります。

瓦が水分を含んでしまうと、前述した色あせやカビやコケが生じますが、別の点として主成分のセメントのカルシュウムが溶け出して流れだし、瓦の内部がスカスカの状態になり強度が低下し脆くなります。

さらにセメントが水の吸収と乾燥による放出を繰り返すと、ひび割れが生じやがて割れて破片が庭やベランダに落ちてくるようになります。
破片が間違って人に当たると危険ですし、モニエル瓦も早急なメンテナンス対策が必要な重篤な状態になっている証拠です。

このようになるまで放っておかないで、きちんとした塗装メンテナンスを行い、モニエル瓦を長持ちさせるようにしましょう。

モニエル瓦を塗装する費用相場

モニエル瓦の塗装費用の相場は、使用する塗装で単価は変化し、たとえばアクリルシリコン塗料を使用した場合に1㎡あたり約2,000円から、フッ素樹脂塗料の使用で約3,000円が相場となります。

この他に、足場や洗浄、人件費や廃材の処理費用などを含めますと、合計費用相場として80㎡なら全体で約70万円前後です。

ただしあくまで相場であって瓦の劣化状況、塗料のグレードによって費用も異なり、また業者でも違いますから見積依頼と確認が必要です。

モニエル瓦を塗装する際の注意点

モニエル瓦を塗装する際には、モニエル瓦ならではのポイントを押さえたメンテナンスが重要です。

まずモニエル瓦を塗装する際には下地処理が肝心です。
下地処理が十分なされていないと、せっかくの塗装も不具合を起こし、やり直す場合は相当の余分な費用がかかってしまいます。
そのうえ、見た目も悪くなり塗装したメリットがなくなりますので注意が必要です。
それでは下処理についての注意点を、下記から詳しくみていきましょう。

(高圧洗浄後のモニエル瓦)

高圧洗浄は必須

モニエル瓦を塗装する際には、下地処理として高圧洗浄による徹底したスラリー層の除去が最重要といっていいでしょう。

スラリー層とはモニエル瓦の表面に約1㎜の厚さで吹き付けた着色層のことです。
この作業は念入りに行う必要があります。
なぜならモニエル瓦が劣化してくるとスラリー層は脆くなりますが、スラリー層が残ったままですと新しい塗料が固着するのを妨げ、劣化したスラリー層と一緒に塗料が剝がれてしまうからです。
もし高圧洗浄で取り切れなかった場合には、手作業で(ケレン作業)で落とす必要があります。

それでモニエル瓦の塗装の下処理として、洗浄で着色スラリーを念入りにしっかり落とすことが重要な注意点で、メンテナンスがうまくいくかどうかのカギを握っているといえるでしょう。
つまり、せっかく施した塗装も無駄になり無意味な出費で終わるので注意してください。

それでメンテナンス工事の際には、業者にあらかじめ「洗浄後の写真を撮って見せて」くれるよう依頼しておき、作業結果を確認できるようにしておくことは、お互いの信頼と安心につながるでしょう。

専用塗料を使う

モニエル瓦は、メンテナンス塗装で下処理に問題があるせいか、塗装後に塗膜が剥離するトラブルが非常に多い瓦です。
また塗料にも原因があると考えられます。

モニエル瓦を塗装する場合は、必ず「モニエル瓦専用」の下塗り塗料を使ってください
下塗り塗料は、塗装作業の3回塗りの時の1回目に使う塗料で、瓦との接着剤の役目を果たす重要な塗料です。
それですべての塗料がモニエル瓦に使えるわけではないことを念頭に置いて塗料の確認はしておきましょう。

おすすめモニエル瓦専用塗料

下塗り用塗料:NTスラリープライマー・スラリー洋瓦用シーラなど
下塗りは最低でも2回はNTスラリープライマーを塗ることで徐々に表面に光沢が出てきます。

補足ですが、ここまで下地処理を十分しているので、耐久性が10年に満たないウレタン塗料は避けた方がいいでしょう。

(塗装後のモニエル瓦)

モニエル瓦は一部修理は不可能

モニエル瓦は、屋根の一部が傷んでいる場合、その部分だけ新しい瓦を重ねるカバー工法は不可能です。
また全体をモニエル瓦に吹き替え直すこともできません。

なぜなら現在は生産・販売がされていないため、同じ瓦を入手できないからです。
特にモニエル社が撤退した直後は在庫が豊富にあったのですが、東日本大震災で倉庫が被災し、ほとんどの瓦が割れてしまったという経緯もあり現在では入手がほとんど不可能といっていいでしょう。

屋根全体の吹き替え工事となると工事費がかさみますから、現在のモニエル瓦を10年~15年ごとに塗装メンテナンスをして、美しいまま残すようにしましょう。

新しい屋根材へ吹き替える場合

しかし、築後40年近く経っているなら、新しく吹き替え工事を検討するのも賢明かもしれません。
モニエル瓦屋根なら、新しくどんな屋根材にも吹き替えが可能です。
たとえば、見た目にこだわらないなら、金属(ガリバリウム)に変更することで金額を安く抑えられます。

ちなみにモニエル瓦からガルバリウム鋼板に葺き替える際の相場は、100㎡あたり120~200万円です。
また同じセメントが主成分でおしゃれなスレート瓦に吹き替える場合の相場は、100㎡あたり90~120万円でおすすめです。

スレート瓦についてはもっと知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。

スレート瓦とは?メリット・デメリット・メンテナンスと費用を解説

モニエル瓦の塗装業者を選ぶ3つのポイント

モニエル瓦を塗装メンテナンスする際には、業者選びも大事です。
なぜならセメント瓦と見た目が大変似ているので、屋根を扱う専門業者でもその違いを理解していない場合があるからです。
特にモニエル瓦は特殊素材を使用しており、専門的な知識と技術が要求されていますので注意しましょう。

下記に専門業者選びの3つのポイントを紹介します。

①屋根点検を細かく丁寧にしてくれる
②モニエル瓦を塗装メンテナンスした施工実績がある
③工事の段階ごとに写真で様子を報告してくれる

上記の3点を確認して業者に依頼するようにしてください。

まとめ

最近ではあまり見かけることが少なくなったモニエル瓦ですが、一時期は一世を風靡した優秀な屋根材です。
日本の代理店が撤退したため、現在では製造・販売がされていないのが残念ですが、デザインや色彩が豊富な魅力的な屋根材といえます。

モニエル瓦は、耐久性にも優れていますが、長持ちさせるにはどうしても塗装メンテナンスが必須となってきます。

この記事ではモニエル瓦の持つ良さと同時に、塗装メンテンナンスをする際の注意点として、洗浄で十分にスラリー層を除去すること、専用の塗料が必要なことや、またメンテナンス塗装費用の相場などについて紹介してきました。

現在は少なくなった貴重なモニエル瓦を、長持ちさせ美しい外観を保ち続けて、優秀な屋根材を残していけますようお役に立てれば幸いです。

 

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