屋根瓦の素材の種類は3つ!特徴・産地・形状別で一挙まとめて解説
屋根材は全部で10種類ほどあるといわれています。
その中でも瓦屋根は今も根強い人気で広いシェアを誇っています。
瓦屋根は素材で分類すると3種類ですが、さらにその中に産地や形状で分けると、種類が豊富な屋根材といえるでしょう。
また瓦屋根の魅力は幅広く、日本家屋にも洋風家屋にも合わせられる良さがあります。
ですから、これから一戸建てを考えておられる方でしたら、特に瓦屋根に一層興味をお持ちのことでしょう。
この記事を通して、瓦屋根について分かりやすくまとめて一挙にご紹介いたしますので、是非参考になさってください。
屋根瓦の素材の種類
- 粘土瓦・陶器瓦(和瓦・洋瓦)
- セメント・コンクリート瓦
- 金属瓦
屋根瓦を素材として分けると、上記のように大きく3つにわけられます。
金属瓦以外は、さらに枝葉としていくつかの種類に分かれます。
粘土瓦・陶器瓦の製法の種類
粘土瓦は、粘土を成形して約1,000℃以上の高温で焼いた屋根材で、陶器瓦ともよび「耐久性・耐火性が高い」特徴があります。
基本的に粘土瓦・陶器瓦はメンテナンス不要です。しかし瓦を支える屋根材(下地等)が古くなったりしますので、修理などが必要になってきます。
陶器瓦は、設置するため始めに初期投資として費用がかかりますが、長い目でみるとメンテナンスの頻度が少なくてすむため、お得な屋根材といえるでしょう。
製法の違いによって下記の4つの種類があります。
- 釉薬瓦
- いぶし瓦
- 素焼き瓦
- 窯変瓦
釉薬瓦
釉薬瓦(ゆうやくかわら)とは、ガラス質の釉薬をかけて焼くことで、瓦の表面を着色してコーティングしたものです。(陶器瓦と呼ぶこともあります。)
瓦の場合は、黒やねずみ色を連想しますが、釉薬の色を変えることで、さまざまな色に着色できます。
釉薬瓦は、塗料を塗ることはないため耐久性が高く、数十年経過しても劣化がほとんどない優れた瓦といえるでしょう。
また日本家屋だけでなく、洋風な建物にも広く使用され普及しています。
- 価格 5,500~16,000円/㎡
- 耐用年数 約50~100年
いぶし瓦
いぶし瓦とは、高温で焼いた後、窯の中でいぶしたものです。
そうしたいぶしによって、炭素の膜を表面に形成し、黒や銀の色味になり渋い味わいを見せてくれます。
新築時には銀色のツヤも年月が経つとムラになるのですが、それもまた経年美の味として深みを感じさせるものです。
耐用年数は少し短く30~60年で、いぶし瓦は吸水性があるため防水性はあまり高くありません。
また、経年劣化で表面の炭素膜の剥がれにより、一層耐水性が落ちてくるので補修が必要となります。
しかし、いぶし瓦は歴史ある社寺仏閣などで使われることが多く、築100年以上経過しても数多く使われ続けている場合もあり長持ちしている場合もあります。
- 価格は 8,000~13,000円/㎡
- 通常の耐用年数 30~60年
素焼き瓦
素焼き瓦(すやきかわら)は粘土を焼いたまま釉薬などかけない素のままの瓦です。
ですから粘土の焼き上がりのままの色が活かされて、自然な風合いを楽しめることから人気です。
また酸化炎症成の赤色の特徴で「赤瓦」として洋風の屋根を飾ることもあります。
そして赤だけでなく、焼き付けの際に数種の色を混ぜることも可能で、予想に反して色のバリエーションも豊富なので驚かれるでしょう。
素焼き瓦であるかどうかで、和瓦か洋瓦の違いを決定づけることもあり、南欧風の印象の洋風建物で使用されることも多く、有名なスペイン瓦なども素焼き瓦のひとつなのです。
- 耐用年数 40~50年くらい
- 価格 5,000~9,000円/㎡
窯変瓦
窯変瓦(ようへんかわら)は、酸化炎、還元炎の窯の中で焼き上げます。
その際の焼き具合だけで、色調が変化し1枚ずつでも連続した変わり方をするので、趣ある変わった特徴を持った瓦といえるでしょう。
釉薬は使わないで備前焼と同じようにして色合いを出しています。
和瓦の産地による種類
和瓦は、長い歴史をもつ「日本三大瓦」とよばれる瓦があります。
日本三大瓦は、有名な3つの産地で取れる粒子の細かい質の良い粘土によって瓦が製造され、3地域で瓦産業が盛んになった歴史ある瓦です。
三州瓦(さんしゅうかわら)
愛知県三河地方で生産され、三州瓦とは三河が名前の由来です。
矢作川(やはぎかわ)の下流流域の粘土で、キメが細かく品質の高い土が使用されています。
瓦の耐震性が問題視されている中で、新しく工夫された施工法が確立し、耐震性・耐風性が格段に上がりました。
他の特徴として、耐火性・耐久性・防水性、耐寒性に富んでいる瓦です。
石州瓦(せきしゅうかわら)
石州瓦は、三州瓦に次いで日本で第2位の普及率があります。
産地は島根県の石見銀山がある地方で製造されており、釉薬瓦で赤色が特徴的な瓦です。
生産地の天候は山間部の積雪地帯で、また台風の通り道でもあり、気候的にはいろんな条件での環境変化があるため、石州瓦は気候変化に強い丈夫な瓦の特性をもっています。
その他の特徴として、防水性、塩害に強い、変色に強いことがあげられるでしょう。
淡路瓦(あわじかわら)
淡路瓦はその名のとおり、兵庫県南部の南あわじ市周辺で製造されています。
淡路瓦の原料は「なめ土」と呼ばれる粘土で、粒子の細かい質の良いものです。
淡路瓦は、いぶし瓦を主として製造され、美しい銀色の瓦が人気を博し、いぶし瓦では全国1位のシェアを誇っています。
淡路瓦の特徴は、強度がある耐圧性で、強アルカリの劣化にも強く丈夫な瓦です。
和瓦の特徴などを詳しく説明している下記もご覧ください。
和瓦・洋瓦の形状の種類
和瓦・洋瓦の形状の違いは3種類あります。
- J形瓦(和瓦)
- S形洋瓦
- F形瓦(平板瓦)
それぞれの種類について説明します。
J形瓦(和瓦)
J形瓦の「J」は「Japanese」の頭文字からとられたといわれており、J型の緩やかなカーブを特徴とした日本の代表的な形の瓦です。
J形の形状は水切れが良く、梅雨時など雨天が続く日本の気候風土によくマッチしています。
現在でも多くの家屋で使われており、日本を代表する瓦として「和瓦 、 日本瓦」 ともよばれています。
S形洋瓦
瓦の断面がS型になっていることや、また「Spanish」(スパニッシュ)のSからとられたという由来があります。
洋瓦の代表で、スペイン瓦を日本の風土にあうように改良したものが使われています。
波打った形状の和瓦である「J形瓦」よりさらに大きく波打っているのが「スパニッシュ瓦」「S形瓦」です。
形状に立体感があり、南欧風の趣きが強いため、日本家屋より洋風家屋によく合い、印象的でおしゃれな雰囲気を醸し出しています。
S形瓦はS字の頂点にあたる大きく波打った部分に空気を取り込むため、保温性と通気性が高いことが特徴です。
したがって寒さ暑さにも快適に過ごせるということで評判がいいです。
S型瓦は、素焼きの赤色瓦で重量があり施工費も高めですが、立体感のある瓦屋根は地中海を思わせ明るくおしゃれで、人々の憧れを叶えています。
F形瓦(平板瓦)
形状がフラット「Flat」の頭文字「F」から取られたという説と、フランス人が広めたなどの説があり、F形瓦とよばれています。
「F型瓦」は施工もしやすく工期を早く仕上げたい人に向いているでしょう。
平たい形状は、太陽光発電を設置したい場合に広く取り入れられており、洋風でも和風でも合うため幅広い人気を誇っています。
洋瓦の詳細な説明については下記に分かりやすく説明されています。
セメント・コンクリート瓦の種類・見分け方
セメント瓦とコンクリート瓦の簡単な見分け方は、瓦の切口で見分けられます。
小口が平で綺麗なのがセメント瓦でセメントと川砂でできています。一方ゴツゴツしているのが乾式コンクリート瓦でセメントと砂利でできています。
- 価格 5,000~10,000円/㎡
- 耐用年数 20~40年(塗装メンテナンスが必要)
セメント瓦
セメント瓦とは、セメントに川砂と水を混ぜて、型枠に入れてプレスし瓦の形にして塗装したものです。
かつて1970年代からの高度成長期の住宅不足の際に、陶器瓦の供給が追い付かなかった時、セメント瓦が陶器瓦と似ていて安く製造できたので、陶器瓦の代わりになるものとして普及しました。
しかし現在では新しく作られることはなくなっています。
セメント瓦の良さは、デザイン性が豊富で成形の時に精度がよく、耐火性に優れていることで使用されるケースがあります。
デメリットとして、セメントの塗料は剝がれて水分を吸収するという耐久性に欠け、色あせを起こしコケが生えやすいことです。
セメント瓦に関する情報は下記に興味深く載せられています。
スレート瓦(コロニアル・カラーべスト)
学術的な分類ではありませんが、瓦の厚みが1cm以下がスレート瓦で、1㎝以上あればセメント瓦といわれています。
スレート瓦は別名コロニアルやカラーべストという呼び名がありますが、これはヒットした商品名がそのまま瓦の名称になったもので、スレート瓦と同じものを指しています。
現在、スレート瓦は瓦屋根の中でも高い普及率があります。
それは価格の安さと軽量なことで施工しやすく、色彩のバリエーションも豊かだからです。
しかしデメリットとして、瓦が薄いためひび割れしやすいという耐久性が問題いえるでしょう。
またセメント瓦のため防水性がなく、定期的な塗装メンテナンスが必須であるといった点があげられます。
しかしメンテナンスを施すことで20~30年の耐久性はありますから、そこそこの長さといえるかもしれません。
スレート瓦にかんする詳細な情報は下記に解説されています。
コンクリート瓦(モニエル瓦)
コンクリート瓦には乾式コンクリート瓦(モニエル瓦)とありますが、両方とも現在は普及されていません。
コンクリート瓦やモニエル瓦は、セメント1に砂利3~4を混ぜて、水分の少ない状態でロールで押し出し、パレットで乾燥させ塗装をした屋根材でセメント瓦の一種です。
しかし両者の大きな違いは、モニエル瓦には瓦の表面に特殊処理が施されている点です。
それは着色スラリーという塗膜の層でコーティングされて防水性が保たれているのです。
この着色スラリーによって、さまざまな色のバリエーションが可能となりデザイン性も高い特徴が得られます。
しかしそうしたメリットもある着色スラリー層ですが、メンテンナスの際には厄介になり、高圧洗浄などで完全に除去しないと再塗装ができない点がデメリットといえるでしょう。
モニエル瓦はコストも安く、約30年前はよく使用されていましたが、オーストラリアにあったモニエル社が日本から撤退したため、現在は廃盤になり手に入らなくなっています。そうした原因で普及しなくなりました。
耐用年数は40~50年と長く、廃盤になっても今もメンテナンスを施し大事に使われている方もおられるようです。
モニエル瓦についての詳細な点は下記からご覧いただけます。
金属瓦の特徴
金属瓦とは、陶器瓦に見えて実は金属でできている金属瓦がでてきています。
たとえば浅草の浅草寺の屋根瓦は、古来の伝統的な瓦に見えて金属瓦が使われているのです。
金属瓦は軽量でメンテナンスの塗装もしやすく、落下しないメリットのため寺社仏閣で使用されています。
メリットは耐用年数が長めで、防水性・防火性がありますが、デメリットは断熱性や遮音性が低く、傷やひこみに弱いことです。
価格は9,000円/㎡~です。
まとめ
瓦屋根の3種類をザっと解説してきました。
粘土瓦は陶器瓦ともよばれ、昔からある日本伝統の瓦屋根で、日本三大瓦があげられます。
そうした産地による種類と、製法による種類があり、釉薬瓦、素焼き瓦、いぶし瓦があります。
また形状による違いは和瓦と洋瓦の違いにも通じますが、J形瓦、S形瓦、F形瓦と分けられています。
そのほかにセメント瓦・コンクリート瓦や金属瓦もあり、廃盤になったものや今もなお普及されているものもありました。
屋根瓦と一口に言っても、形状や産地でいくつかの種類があったことをご納得いただけたと思います。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、瓦屋根を検討されている方などは、いろいろ比較しなければなりませんが、そのための参考にしていただけることを願っています。
また、それぞれの詳しいことは参照のリンク先でご確認いただければうれしく思います。