屋根の葺き替えタイミングはいつ?診断と工事手順・相場費用を解説
屋根は建物を保護し美観を左右する重要な部分です。
ですが近くで見えにくいため、劣化状況がどうなっているか気になるところですね。
屋根も定期的にメンテナンスをしていても、いずれ寿命を迎えてしまいます。
そこで屋根の葺き替えを、どのタイミングにすればよいのか迷っておられる方も多いのではないでしょうか?
この記事は、屋根を葺き替える前に行える診断、葺き替え工事をする場合の手順、どのくらいの費用が相場なのかについて解説していきます。
また最後には重要な業者選びのポイントも説明していますので、最後まで読んでいただくことをおすすめします。
屋根の葺き替え工事とは?
屋根の葺き替え工事とは、屋根材を丸ごと新しいものと交換する工事です。
屋根瓦だけでなく、その下にある防水シートや下地の野地板など、古い屋根材をすべて取り除いて新品になるので、まるで生まれ変わったような屋根になります。
屋根の傷みが少ない場合は、傷んだ箇所だけの部分工事や補修工事で済むのですが、劣化がすすみ下地まで及んでしまった場合は、屋根の葺き替え工事が必要です。
屋根を葺き替えるメリット
- 家の寿命や耐久性が増し、再び長く住み続けられます。
防水シートの交換によって雨漏りの心配がなくなり安心です。 - 屋根を新しくすることで、家全体の印象や外観を美しく見栄えのいいものになります。
- 重かった瓦から軽い屋根に葺き替えることが多いので耐震性が高まります。
屋根を葺き替えるデメリット
- 費用が高い
新しい屋根材などの材料費や取り換える廃材の処分費がかかります。 - 工期が長め
塗装や補修工事なら2~3日で済みますが、屋根の葺き替え工事となると7~10日も工期が長くなります。 - 廃材がでる音や埃などが近隣へ影響する。
廃材の破片が飛んだり、細かい埃が舞ってしまうので、近所とトラブルにならないように注意が必要です。一部の屋根の葺き替え工事では確認申請が必要
2025年4月に建築基準法が改正され、従来は確認申請が要らなかった建物でも、一部の建物で申請対象に含まれるようになります。
確認申請では、建物の構造の安全性を見極めるため、建物の構造計算書等を提出しなければなりません。
確認申請が必要になる一部の建物については、手続きに費用や期間を要するため、今までより工事開始まで時間がかかってしまいます。
確認申請が必要になる建物とは、構造によらず、2階建て以上または延べ面積200㎡を超える建築物で、野地板を全体の半分以上交換する場合です。
しかし、法改正が行われても、屋根の葺き替え工事では、防水シート(ルーフィング交換)までは確認申請は要りません。
ですから平屋で延べ床面積200㎡以下は従来通り不要ですが、改正後は一般的な木造2階建てでも申請対象になります。
法改正後の実際の現場では、野地板の交換が半分を超えない範囲で、とめておかれる方法が取られるでしょう。
ですが、一般的な2階建て住宅で野地板を半分以上入れ替える、大規模な屋根の葺き替えが必要な場合は、改正前に早めにしておくことをおすすめします。
屋根の葺き替え工事が必要か診断する
屋根の葺き替え工事が必要かどうかをどのようにして判断すればよいでしょうか?
業者に下記の状況がないか、屋根の診断をしてもらいましょう。
傷み具合によって葺き替え工事まで必要かどうかわかります。
できれば、下記のような診断は1年に1回がベストです。
- 屋根材にひび割れが多くみられないか?
- 屋根全体に色あせた感じがないか?
- 屋根にコケやカビが生えていないかどうか?
- 雨漏りの形跡が多数ないかどうか?
- 棟板金が外れてズレており、木材が腐食し劣化していないかどうか?
屋根の葺き替え工事のタイミングはいつ?
雨漏りが複数個所で生じる
軽い屋根材のズレぐらいなら、屋根材の下に設置されている防水シートが雨漏りを防いでくれるものです。
しかし雨漏りがするということは、防水シートがダメージを受けている証拠といえます。
そのまま放っておくと、防水シートの下の野地板まで雨水で濡れて腐ります。
雨漏りがしたら即刻、補修施工をするのがベストですが、1年以上の時間が経っているなら、野地板まで補修できる屋根の葺き替えが必要となるでしょう。
屋根材の割れや傷みがひどい
屋根材が劣化すると「色あせ」「カビ」「軽いヒビ」が生じてきますが、補修や塗装で対応ができる程度です。
しかし、ヒビでなく割れてきたり、台風によって屋根が剥がれたり、錆で穴が開いている場合は、補修できないほど傷んでいるといえます。
屋根材の傷みがひどい場合は、下地材も傷んでいることが多いため、下地から入れ替える屋根の葺き替えが望ましいでしょう。
新築してから年数が経っている
素材による寿命の違いがありますが、築年数が30~40年経っている場合は葺き替えを検討する時期といえます。
定期的に塗装メンテナンスを施していても、多くの屋根材で耐用年数が経過していることがあるからです。
メンテナンスが行われず長年放置している
屋根材は定期的な補修や塗装メンテナンスが必要です。
たとえばスレート瓦は、瓦自体に防水性がなく塗装メンテナンスで防水性を補強しています。メンテナンスを怠ると、スレート瓦が水分を吸収してしまい、形が歪んだり雨漏りを起こします。やがて防水シートに達し、結果的に野地板まで腐らせてしまう結果となります。
瓦の下までは見えないので、実際に開けてみると深刻な事態になっている可能性があります。
ですからメンテナンスを長年放置している場合は、葺き替え工事の検討が望ましいでしょう。
屋根材ごとの葺き替えタイミング
屋根材 | 葺き替えタイミング |
スレート | 20~30年 |
和瓦 | 60~80年 |
トタン | 10~20年 |
ガルバリウム鋼板 | 25~35年 |
屋根材の下に敷かれる防水シート(ルーフィングシート)の耐用年数は、約20年~30年程度です。
それで屋根材の耐用年数とは異なっており、和瓦の場合も防水シートの交換が必要になります。
そのため、瓦はそのまま使えても約20年~30年に一度、屋根の葺き替えをしなければなりません。
屋根の葺き替え工事の手順
屋根アスベスト含有の有無を事前報告
法律により2022年4月から、アスベストが含有されているかどうか、葺き替え工事前に自治体へ報告する旨が定められました。
依頼者と業者の双方に、手続きが適正に行われている確認も必要です。 参照:環境省 事前調査
2023年10月1日から、アスベスト含有の事前調査は、建築物石綿含有建材調査者もしくは同年9月30日までに日本アスベスト調査診断委員会に認められた方のみが行えます。
有害物質のアスベストは、2006年までスレート瓦に含まれていました。
スレート瓦が寿命がきて葺き替えが必要な場合の多くは、アスベストが含有されている時期に相当し、事前調査は安全のため肝要だといえるでしょう。
近隣へ配慮し挨拶周りを実施
屋根の葺き替え工事は、騒音や粉塵が発生し近隣住民に迷惑な影響を与える場合を念頭に置いておきましょう。
工事前に近隣を回り挨拶をし、葺き替え工事では安全対策を万全にする一方、釘や破片が飛び散る危険があることを説明し気遣いを示すことが大切です。
挨拶は業者が代行してくれる場合もありますが、工事を依頼する側としても近隣と話し合いトラブルにならないように配慮しましょう。
既存屋根の撤去
足場を組み工事に入りますが、まず現在の屋根を撤去します。
安全確保のためにも、専門の業者が屋根材の破片が飛び散らないように丁寧に撤去作業を行いましょう。
野地板の設置
野地板の設置は屋根材を支える基礎ですので大事な工程です。
また野地板は下地として直接据えられるため耐久性が求められています。
野地板の合板を適切に選ぶことにより、屋根全体を長く安全に保てます。
ルーフィング貼り付け
次いで野地板の上に、防水シート(ルーフィング)を張り付ける施工工程があります。
屋根を雨水から防ぐのに欠かせない役目を持っています。
ですから防水シートを丁寧に設置していかないと、雨漏りを起こすため注意深い作業が求められるでしょう。
屋根本体の立ち上げ
防水シートが設置されたら新しい屋根材を立ち上げます。
屋根本体の立ち上げは、葺き替え工事の最終部分にあたり、外観や耐久性を決定づける工程です。
屋根材には、瓦、スレート、金属などのさまざまな種類があり、それぞれの特徴に合わせた適切な取り付け方をしなければなりません。
自分の嗜好にあい機能性も考慮した屋根材を選択しましょう。
面戸・換気棟の取り付けと完成
面戸や換気棟の取り付け工程です。
屋根の通気性をよくし、湿気が逃げやすくなり、蒸れを防ぐ機能があります。
また外観の美しさにも関係してくる部分ですので、慎重に行うべき作業です。
こうして屋根の葺き替え工事は完成し、工事の品質や仕上がりの最終チェックを終えて完了します。
丁寧で適切に工事が行われることで、耐久性が持続し大切な家を守る存在になることでしょう。
屋根の葺き替えの費用相場
瓦から一般に広く使用されているスレート瓦に変更する場合の費用相場は、目安として70万円から200万円程度です。
また瓦からガルバリウム鋼板に変える場合の相場は、一般的に80万円から210万円がかかります。
しかし屋根の面積や複雑な形によって変わってきますし、地域によって価格も違ってきます。
ですから、業者から自宅に合わせた正確な見積もりを取ることは重要です。
下記にある標準的な30坪の住宅の用相場から参考にできるでしょう。
https://horiikawara.com/roof-replacement-cost/
屋根の葺き替えの工事日数と適した時期
スレート瓦の屋根の葺き替え工事は、平均約7日とされています。
土葺き瓦屋根は、約10日間が一般的です。
しかし工事期間は、屋根の状態や新しい材料、気象条件に大きく左右されます。
ですから悪天候などの予期せぬ状況で工期日数が伸びることも考慮に入れておきましょう。
屋根の葺き替えに適した時期については、降雨量が少なく乾燥した季節は、作業が順調に進みます。
たとえば、春や秋、12月~1月ごろが適しています。
梅雨時や台風シーズンなど天候が不安定な時は避けた方が無難です。
適切な時に施工することで、工期の遅れを防ぐだけでなく、品質の良い仕上がりとなるでしょう。
屋根の葺き替えで補助金や保険は使えるか
市町村自治体で、補助金制度が異なっています。
調査することで、活用できる補助金でかなりの節約になります。
たとえば瓦屋根に関して、国土交通省では、瓦屋根をガイドライン工法で屋根の葺き替え工事をする費用の23%を対象に補助金が支給されます。
参照:国土交通省・瓦屋根改修のススメ
また、台風などの自然災害で屋根が吹き飛ばされたりした場合は、火災保険の対象になります。
屋根の葺き替えで信頼できる業者選びの重要性
下記の点に注意して業者選びをしましょう。
- 地域に根差した業者
- 経験豊富
- アフターサービスが充実している
- 相見積もりをとる
- 対応が丁寧業者を選ぶ際、施工実績や評判、説明が丁寧でメリットだけでなくデメリットの部分も誠実に答えてくれる信頼できるかどうか確かめましょう。中には悪徳業者もいます。工事の品質が悪いとたったの数年で雨漏りがすることもあります。
また相見積もりを取り、内容を精査しわからないことは、たずねるようにしてください。
まとめ
屋根の葺き替え工事は一生に一度あるかないかという一大イベントです。
そんなイベントに際して、屋根の葺き替え工事に関してなされた確認申請の法改正や、スレート瓦に必要なアスベストの事前調査についても解説してきました。
なにかにつけ面倒なことも多いですが、葺き替え工事が必要になっているのに放置するのは危険です。
この記事から、わかりやすく簡単に屋根の葺き替え工事の手順や補助金で節約できることなどをお伝えできたかと思います。
重要な家を保護し個性的な美しさを表現する屋根に目を向け、必要な工事を適切に行ってくださるように願っています。