スレート瓦とは?メリット・デメリット・メンテナンスと費用を解説
近年スレート瓦が注目され一般的な瓦材として普及しています。
たしかにスレート瓦は、安くておしゃれな外観を楽しめる魅力的な屋根材といえるでしょう。
ではスレート瓦には、具体的にどんな特徴やメリットがあるのでしょうか?
またデメリットやメンテナンスの頻度や費用はどのくらいなのでしょう?
そういった情報はこれからスレート瓦を検討される方にとっては重要なことになりますね。
この記事を通じて、スレート瓦について必要な知識を得てくださるよう記述したいと思います。
スレート瓦とは?
スレート瓦は2006年以前の場合は、アスベストが使用されていました。
近年アスベストは発がん性があり、健康被害を被ったことによる訴訟が起こされていることは周知の事実です。
そこで2006年「労働安全衛生法施行令」の改正により、アスベストは全面禁止となり現在は販売や使用はされていません。
しかし2006年以前の建物で瓦にアスベストが使用されていても、破壊した場合には飛散するので注意を要しますが、普段の状態では何も心配はありません。
現在のスレート瓦はノンアスベストで、屋根建材では主流の一つとなっています。
スレート瓦の主原料はセメントで、パルプなどの石綿以外の繊維素材を混ぜて作られています。
形状も波型や平型といったデザイン性に富み、カラーバリエーションも豊かです。
さらにスレート瓦の厚さは5mm前後と、スマートフォンと同じくらいの厚みです。
したがって軽量であり加工しやすく工事期間の短縮や費用が削減される点が、最大の魅力といっていいでしょう。
ただし、スレート瓦は雪下ろしができないため、北海道や東北地方などの豪雪地帯には向きません。
またスレート瓦の品質を維持し耐久性を高めるため定期的なメンテナンスが不可欠というデメリットもあります。
一般的な瓦との違い
屋根に使われる一般的な瓦は、大きく分類すると次の4種類あります。
- 粘土瓦
- セメント瓦
- スレート瓦
- 金属系の瓦
下記はそれぞれの違いを比較した表です。
種 類 | 耐用年数 | 1㎡当たりの価格 | 1㎡当たりの重さ |
粘土瓦 | 50年以上 | 9,000〜12,000円 | 60kg |
セメント瓦 | 30年程度 | 6,000〜8,000円 | 43kg |
スレート瓦 | 20〜30年程度 | 4,500〜8,000円 | 20kg |
金属系(ガリバリウム)瓦 | 30年程度 | 6,000〜9,000円 | 5kg |
スレート瓦は、耐久性は劣るものの、価格も安価で重さも金属系のガリバリウム程ではありませんが軽量なため一般的に広く使用されている理由がわかります。
スレート瓦の種類
スレート瓦には「天然スレート」と「人口(化粧)スレート」があり、それぞれの特徴を説明します。
天然スレート
天然スレートは、天然の粘板岩ででき、それを薄く板状に伸ばした屋根材です。
加工に高い技術が必要とされ、高級感が溢れており、しかも自然な風合いを生かした品質の良いもので、色も多く外観もおしゃれです。
また天然スレートは、海外のお城や寺院、日本では東京駅の屋根に使用されている大変高価な建材のため残念ながら普及していません。
そして天然石を使用している高価さと、加工に技術と手間がかかるなどの理由で、一般的な住宅ではほとんど使われなくなりました。
人工(化粧)スレート瓦
化粧スレートは人工的な屋根材で、セメントとパルプなどの繊維材料を混ぜ、高温高圧下で成型し、その上から塗装を施したものです。
別名でコロニアルやカラーベストという呼び方でも知られていますが、どれも同じ人工(化粧)スレートのことです。
その別名は日本で一番出回り親しまれている商品名やシリーズ名で、化粧スレートの代名詞のようになったものです。
また化粧スレートは品質が安定して供給され、作業もしやすく、コストも抑えられることから、住宅屋根材として一般的に多く使用されています。
天然スレートとは全く別物で、現在スレート瓦といえば人工(化粧)スレートのことを指しています。
今後この記事で「スレート瓦」と表記する場合は、人工(化粧)スレート瓦のことと考えてください。
スレート瓦のメリット
- 価格が安く工期も短い
- 色やデザインが豊富
- 軽量で耐震性に優れている
- 依頼できる施工業者が多い
①価格が安く工期も短い
スレート瓦の最大のメリットといえるのが、新築時に導入する際にもっとも安価で、その後のメンテナンス費用も抑えられる点です。
本来はスレート自体は比較的高価なものですが、屋根材として使用する部材がスレート屋根以外にほとんどないことで、全体の材料費を安価にできます。
工期も短く完成が早いのは、スレート瓦は軽く加工がしやすく、施工方法もシンプルなためです。したがって工事費用も安くすみます。
スレート瓦の導入コストとランニングコストの安さは大きな魅力です。
②色やデザインが豊富
スレート瓦は実に様々なカラーバリエーションが揃っています。
色は24色以上あり色鉛筆くらい豊富で、定番色のグレーやブラック、ブラウンなど、和風にも洋風にも合わせられるので、おしゃれな色の外観を希望される方に喜ばれています。
さらに形状や質感にも種類があり、デザインの選択肢が多い屋根材です。
平型のスレート瓦ならシンプルですっきりとした外観になりますし、波型や特殊形状といったデザインで個性的なこだわりを追求できます。
スレート瓦は安くて外観をおしゃれに演出できるのもメリットです。
③軽量で耐震性に優れている
スレート瓦は軽量なため耐震性にも優れています。
というのは屋根の重量は耐震性と比例するので、軽ければ軽いほど地震がきても揺れにくいからです。
粘土瓦の場合は、耐久性は高いのですが、重さは前述したように1㎡あたり約60㎏にもなるため耐震性が低いという弱点があります。
いっぽうスレート瓦は1㎡あたり約20㎏程度で、粘土瓦の1/3程度の重さですから非常に軽いといえます。
つまり重量が軽いと建物にかかる負担が小さくなる分、地震の揺れに強くなり破損や倒壊の危険性が下がるメリットがあります。
④依頼できる施工業者が多い
スレート瓦は、施工しやすいため依頼できる業者も多いのもメリットです。
スレート瓦は日本の戸建ての屋根材でも高い普及率を誇っています。
ですからほとんどの屋根の施工業者はスレート屋根を扱えるといえます。
扱える業者が多くあると、スレート屋根の設置やメンテナンスでの塗装・補修も依頼しやすく、見積りを取って業者を比較検討して選択できるのはメリットです。
スレート瓦のデメリット
- 苔やヒビ割れや反りが発生し耐久性が低い
- 雨漏りしやすい
- 定期的な塗装が必要
①苔やヒビ割れや反りが発生し耐久性が低い
スレート瓦は、ヒビ割れしやすく耐久性が低いことが最大のデメリットです。
スレート瓦は塗膜で保護されていますが、厚さが5mmと薄い板状のため、強風などでもビビが入りやすいのです。
また塗膜が剥がれて防水性を失うと、雨水の急激な吸水と乾燥を繰り返し「ビビ割れ」や「反り」の原因になります。
さらに冬場では夜間と日中の寒暖差により膨張を繰り返すことで「割れ」といった劣化にも繋がります。
そしてスレート瓦の主成分はセメントで水を吸い込みやすいため、苔や藻が繁殖する絶好の住処となり屋根が汚れてくるなどのデメリットがあります。
②雨漏りしやすい
スレート瓦はヒビ割れや反りや浮きといった部分から浸水して雨漏りが生じます。
前述しましたが、それらの原因はスレート屋根の塗膜の剥がれです。
そのまま放置しておくと、雨水が防水シート部分まで入り込み、屋根部分だけでなく建物全体にまで及ぶ劣化に繋がる危険性があります。
雨漏りが生じたなら、どの部分か特定して補修しないと99%の確率で雨漏りを繰り返すことになりますので、まず入念に調査してから行うようにしましょう。
③定期的な塗装が必要
スレート瓦は生産時に塗装を施して防水性を高めていますが、スレート瓦自体には雨水の侵入を防ぐ防水機能がありません。
そして塗装の塗料は、紫外線や風雨にさらされ続けると経年劣化を起こし剥がれてきます。
それで塗膜の剥がれはスレート瓦のデメリットのすべての原因ともいえますので、定期的な塗装が必須です。
スレート瓦のメンテナンスと費用
スレート瓦の耐久年数は20~30年ほどです。
しかし定期的なメンテナンスがあってこそ、その年月まで長持ちが可能となります。
スレート瓦のデメリットでも紹介しましたが、スレート瓦には防水機能がないため塗装によって防水性を保つ必要があります。
それで10~15年毎の塗装や、5~10年毎の補修メンテナンスが必要です。
下記でメンテナンスの項目と費用について説明します。
・メンテナンスの必要項目
- ひび割れの点検・補修
- 塗装と縁切り作業
- 棟の交換
- カバー工法
- 葺き替え(ふきかえ)
①ひび割れの点検・補修
スレート瓦は、設置工事の際に体重の重い人が乗るだけでヒビが入る程デリケートなもので、その小さなヒビが風雨や紫外線にさらされ、やがてヒビ割れになります。
そうしたヒビ割れを起こしてくるのが5~10年です。
ですからそのタイミングで業者に点検を依頼し、劣化の具合を確認しましょう。
【費用】ヒビの部分の補修だけなら2~5万円です。
②塗装と縁切り作業
スレート瓦に防水性がないことは前述しました。
そこで塗膜によって保護する必要があり、塗装は10~15年おきに行います。
そしてその際に欠かせないのが、水分を排出させるための縁切りの作業です。
もし縁切りを行わないとスレート瓦は雨漏りしてしまいます。
縁切りとは、スレート瓦に再塗装をした時に、瓦の上下の重なり部分に塗料が張り付くのを防ぐために塗料を切ることです。
スレート瓦の重なり部分の塗料が完全に乾く前にカッターなどを差し込んで切ります。
そうすることで、瓦と瓦が塗料で詰まることを防止します。
縁切りを行うことで、瓦内部に入った水を外に出せますので、漏水を起こしたり屋根下地が腐食するといった事態を防げます。
また塗装の際に縁切り材の「タスペーサー」を使うなら隙間を確保でき、水の排出を行えるので安心です。
そして塗料はグレードの高いものを使用するとよいでしょう。
なぜなら屋根は外壁に比べ負荷のかかる傷みやすい場所のため劣化が早く、グレードの高い塗料は劣化を遅らせるのに効果を発揮するからです。
ちなみに屋根の塗料は、一般に推奨されている仕様として、下塗はシーラー、上塗はアクリルシリコン樹脂の組み合わせがよいとされています。
【費用】劣化の度合いによりますが、40~60万円前後です。
③棟の交換
「棟」(むね)とは、屋根の頭頂部に山形にかぶせる部分を指します。
棟の部分は経年劣化で釘が弱くなり固定箇所が外れやすくなります。
そしてズレてしまったり台風の強風で飛んでしまう危険性が生じます。
それらを防止するため、15~20年を目途に交換を行うとよいでしょう。
【費用】約10~30万円ほどです。
④カバー工法
カバー工法とは、今まである屋根材を剥がさずに、既存のスレート材の上から新しいスレート材を張り付ける作業のことです。
カバー工法は、スレート材の劣化が進みすぎて、塗装だけでは対処できない時に取られています。
葺き替えに比べると安くあがります。
【費用】約100万~150万円程度です。
⑤葺き替え(ふきかえ)
葺き替え(ふきかえ)は、雨漏りが起こってしまい塗装だけでは対処しきれない時や、スレート屋根の耐久年数の30年が経った時にします。
葺き替えの作業は、既存の屋根材を取り除き、新しい防水シートを敷き屋根材を張り付けて行われます。
【費用】約150万~200万円かかります。
なお既存の屋根材によって費用は変わってきます。
- スレート瓦屋根からスレート瓦屋根の場合(30坪の家)
【費用】80万~120万円 - 日本瓦からスレート屋根への葺き替え(30坪の家)
【費用】100万~160万円
※葺き替えは既存屋根の撤去や下地補修工事も必要ですので、補修や塗装より費用が高くなります。
スレート瓦はメンテナンス次第で30年以上も長持ちさせられますが、メンテナンスを怠ると20年で寿命が来てしまうこともあります。
ですから、スレート瓦には定期点検・補修のメンテナンスは必須といえるでしょう。
屋根の点検商法の詐欺に注意
屋根の部分は見えないこともあり詐欺の対象になりやすく、ニュースでも詐欺被害に遭った方々のことが報道されています。
よく聞く手口は突然訪問してきて「近くで工事しているのですが無料点検のキャンペーンをしています」と言って屋根に上がる口実を作ります。
一旦屋根に上がらせてしまうと大変な目に遭いますから気を付けてください。
彼らは屋根の劣化した部分だけ写真を撮り「すぐに修理しないと雨漏りがする」といって不安を煽り、不要不急の工事をすすめてきて、その場で契約させようとします。
悪徳レベルが高くなると意図的に屋根を壊す業者もいる程です。
そうした手口は点検商法という詐欺で、国民生活センターでも注意を呼び掛けています。
またスレート瓦はむやみに屋根に上がるとヒビの原因になりますから特に警戒が必要です。
無料だからと気安く考えると悪徳業者のワナにかかってしまいますから、訪問業者の「無料点検」は相手にせず断固として退けてください。
そもそも優良業者は、訪問してまで仕事を取りにきたり、大幅値引きやキャンペーンをしなくても、仕事の依頼が入っているものです。
ですから屋根という見えない部分への不安を煽ってくる、悪徳業者の点検商法にはくれぐれも注意しましょう。
スレート瓦のまとめ
スレート瓦は、安価で工事期間も短く一般家庭に多く取り入れられている屋根といえます。
また軽量であることから耐震性にも優れています。
そして種類や色のバリエーションも豊富でデザインや外観の見た目を重視する人にはおすすめな建材です。
しかし耐久性に問題があるため、定期的なメンテナンスは必須です。
そうしたデメリットもありますが、費用の点だけを長い目で総合的に捉えると安くすみますし、全体的に評価しても手軽で扱いやすい瓦材といえるでしょう。
スレート瓦を新築で利用することや葺き替えを検討されている場合は、メリット・デメリット・メンテナンスや費用をよく考え、この記事が賢明な判断材料となってお役に立てることを願っています。