気をつけたい!コロニアルNEOの劣化症状とメンテナンスについて
「コロニアル屋根」という屋根材をご存じでしょうか?
住宅を新築、購入する際はチェックするポイントが多く、ご自宅の屋根材の種類や特徴を把握しているという方は意外と少ないのかもしれません。
そこで今回の記事では、コロニアル屋根のなかでも特に注意が必要な「コロニアルNEO」について屋根のプロが解説していきます。
メンテナンスやリフォームのポイントをわかりやすく紹介していますので、ぜひ参考になさってください。
コロニアル屋根とは
コロニアルNEOについて解説する前に、「コロニアル」という屋根材の基礎知識をご紹介します。
コロニアルとは、戸建て用に開発されたスレート屋根材の一つです。
クボタとパナソニックが共同開発した屋根材の商品名で、現在では両社が設立した「ケイミュー株式会社」が製造販売しています。
コロニアル屋根には第一世代から第三世代まであり、それぞれ特徴が異なります。
第一世代(ニューコロニアル)
地震大国である日本では、住宅の耐震性能を高めるためにより軽量な屋根材の開発が進められてきました。
スレート屋根の一種であるニューコロニアルの主な成分は、セメントです。
セメントだけでは強度が低いため、ニューコロニアルはアスベスト(石綿)を使用して強度や耐久性を高めた屋根材です。
アスベスト(石綿)は、相次いで健康被害が報告されたことから、現在では製品への使用が法律で禁止されています。
第二世代(コロニアルNEO)
アスベストの使用が禁止された後、2001年頃に開発販売されたスレート屋根材が「コロニアルNEO」です。
屋根材としての強度を維持するため、アスベストの代替素材を各メーカーが研究しましたが簡単には見つかりません。
そのため、コロニアルNEOを始めとしたこの世代のスレート屋根は強度が低く、劣化が著しいという特徴があります。
第三世代(コロニアルクアッドなど)
2008年にケイミュー株式会社が販売を始めたのが、第三世代にあたる「コロニアルクアッド」です。
耐用年数は約30年といわれていますが、販売からまだ十数年しか経っておらず耐久性についてはこれから評価されていく途中です。
第三世代のコロニアル屋根材は、セメントにパルプ繊維とシリカ粒子などを加えて安定した強さを保っています。
コロニアルNEOの劣化症状
コロニアルと呼ばれるスレート屋根材には、世代が3つあってそれぞれ異なる特徴があることがわかりました。
そのなかでも、もっとも注意が必要なコロニアルNEOの具体的な劣化症状についてくわしく解説していきます。
ひび割れや欠けが多い
強度が低く耐久性に乏しいコロニアルNEOは、職人が登っただけでもひび割れや欠けを生じることがあります。
また、ひび割れや欠けは一つの方向だけでなく、方向性がなく無数に起こります。
ひび割れや欠けのサイズが大きいこともコロニアルNEOの劣化症状の特徴です。
数枚の劣化であれば部分的な交換で対応できます。
しかし、屋根材全体に症状が出ることが多いために部分補修での対応は難しいことが多いです。
変色・色褪せしやすい
スレート屋根の劣化症状として、日差しが当たりやすい南面から変色や色褪せが見られることがあります。
ところが、コロニアルNEOの場合は同じ方角を向いている面であっても、屋根材1枚1枚ごとに変色や色褪せの度合いが違うことが特徴です。
第三世代(現在普及しているスレート屋根材)であれば、変色や色褪せを表面の塗膜の寿命と考えて塗装メンテナンスすることで使い続けられます。
しかし、コロニアルNEOは塗装をするために屋根に登ったり、塗装前の洗浄をしたりすることでさらに屋根材自体を傷めてしまうリスクが大きいです。
コロニアルNEOの見分け方
ご自宅の屋根材の種類やメンテナンス時期を把握することは、お住まいの寿命を長く保つために重要です。
前述したとおり、アスベスト(石綿)はスレート屋根材の耐久性を高めるために使用されていました。
健康被害が報告され始めた1990年代後半には、アスベストを材料としないスレート屋根の開発が進み、コロニアルNEOは2001年に「ノンアスベスト」のスレート屋根として販売が開始されました。
2008年に第三世代のコロニアルクアッドが販売されるまで約7年の販売でしたが、その期間のスレート屋根のシェアをほぼ独占していたため、コロニアルNEOの劣化に悩まされている方はたくさんいらっしゃいます。
では、ご自宅の屋根材が「コロニアルNEO」であるかどうかはどのように判断すれば良いのでしょうか。劣化症状の特徴とあわせてお読みください。
全体的にひび割れいる
部分的ではなく、屋根全体にひび割れや欠けが広がるのがコロニアルNEOの大きな特徴です。
スレート屋根にひび割れや欠けが見られたとしても数カ所に留まります。
全面にひび割れや欠けがある場合はコロニアルNEOである可能性が高いです。
大きな欠けがある
一般的なスレート屋根材の劣化症状として見られる欠けは、5cm程度までの小さなものがほとんどです。
一方、コロニアルNEOでは10cmを超えるような大きな欠けがよく見られます。
このような欠けを放置しておくと、屋根の下地材の腐食や雨漏りへとつながりやすくなってしまいます。
新築時や屋根葺き替え工事の仕様書を確認する
コロニアルNEOであるかどうかが不安な方は、新築時や屋根葺き替え工事の仕様書を確認してみましょう。
仕様書には屋根材の種類が明記されています。
仕様書が見当たらない場合は、ぜひ当店へご相談ください。無料で点検させていただきます。
コロニアルNEOのメンテナンス
コロニアルNEOは耐久性に問題を抱えていて、屋根材だけではなく下地材への影響や雨漏りの可能性も否定できません。
コロニアルNEOのメンテナンスにはどんな方法があるのでしょうか。
一般的なスレート屋根材に行われる、塗装や洗浄によるメンテナンスの有効性について見ていきましょう。
コロニアルNEOは塗装できない
スレート屋根のメンテナンスといえば、まず思い浮かぶのが塗装です。
スレート屋根の原料はセメントであり、表面の塗膜によって耐候性や防水性能を付加しています。
10年をめどに塗装し直すことによって、スレート屋根を安心して使い続けられます。
ところが、コロニアルNEOは塗装ではメンテナンスできないスレート屋根材なのです。
せっかくお金をかけて塗装メンテナンスをしても剥離などの不具合が起きる可能性が高く、おすすめできません。
高圧洗浄も不向き
屋根材を美しく保つメンテナンスの一つに高圧洗浄があります。
塗装やその他の補修時もまずは汚れを落としてから作業を進めるのですが、コロニアルNEOではそうはいきません。
高圧の水に耐える強度がなく洗浄後に多数のひび割れが生じてしまいます。
そのため、高圧洗浄でのメンテナンスにも向いていない屋根材です。
コロニアルNEOのリフォーム方法
ご自宅の屋根材がコロニアルNEOだと判断できた場合には、塗装でのメンテナンスではなく「屋根カバー工法」もしくは「葺き替え工事」でのリフォームがおすすめです。
屋根カバー工法
屋根のカバー工法は、重ね葺きやカバールーフとも呼ばれています。
既存のコロニアルNEOを撤去することなく、その上に新しい防水シートと屋根材を施工します。
既存の屋根材を撤去する費用をカット、工事期間も短くなることが大きなメリットです。
また、屋根材が二重になり断熱・防音効果が高まります。
コロニアルNEO対策としておすすめしたい屋根カバー工法ですが、デメリットもあります。
屋根を重ねて葺くことによって、屋根全体の重量が重くなり住宅の耐震性能が低下します。
カバー工法はコストを安く抑えられますが、重ねた屋根材の寿命がきた場合や家を建て替える場合には、屋根の撤去費用が倍かかります。
廃棄物の処理費用が年々上昇することを考えると、長い目で見て採用を検討することがおすすめです。
屋根葺き替え工事
屋根の葺き替えとは、既存の屋根材(コロニアルNEO)を撤去して新しい屋根材を張る工事です。
一般的には、屋根材を撤去した後、新しいベニヤ板と防水シートを設置します。
コロニアルNEOの劣化状態が悪く雨漏りで屋根の下地材に腐食が見られる際には、補修したうえで屋根を葺きます。
カバー工法と比較すると工期が長く費用もかかりますが、住宅の耐震性能を下げることなく見た目も美しく仕上がることが大きなメリットです。
まとめ
耳慣れなれえない屋根材である「コロニアルNEO」についてくわしく解説してきました。
スレート屋根の過渡期に、大量に流通したコロニアルNEOに悩まされている方は少なくありません。
今回の記事を参考に、ご自宅の屋根材にとって最適なメンテナンスをしてください。