屋根の雪止めは必要?設置費用・種類・後悔しないための全知識
雪止めと聞くと、北国の豪雪地帯に必要なもので、雪の少ない地域では関係ないものと思っていませんか?
実は、雪止めは雪国だけでなく、積雪の少ない地域でも設置がすすめられているものなのです。
なぜなら、昨今の地球温暖化や異常気象で、雪の被害は普段、積雪量の少ないはずの都市部に稀な雪害をもたらすことがあるからです。
そうした地域では、一度積もれば急激な気温上昇で一気に雪が滑り落ち、大きな事故につながる危険性をはらんでいます。
雪止めは、あなたの家と暮らしを守るための重要な設備であり「保険」のようなものです。
この記事では、「雪止めとは何か」という基本から、「なぜ必要か」「どんな種類があるのか」「費用はどれくらいか」まで、疑問に思うことを取り上げます。
本記事から、自宅に雪止めを設置する必要性と、後悔しないための全知識を手に入れることができるでしょう。
雪止めの役割とは?
雪止めとは、屋根に積もった雪が気温の上昇によって、一気に滑り落ちる「落雪」を防ぐ装置です。
主に、屋根の軒先近くに設置され、積雪をせき止めたり、雪が溶けた水を少しずつ安全に流れ落ちるようにコントロールする役割をもっています。
雪をせき止めスムーズな排水に貢献
雪止めは、屋根を滑り落ちようとする雪の塊をせき止め、雪崩のような急激な落雪を防ぎます。
雪を一旦屋根の上に止め、太陽熱などで徐々に溶けるようにし、軒先にほどよい水量で流れ出るようにコントロールして住まいを安全に守ります。
雪止めの効果的な設置場所
戸建て住宅の場合、多くは軒先から1〜2列目の屋根材に金具を固定して設置されます。
特に、隣家との境界が近い側や、人や車が通る場所の真上など、落雪による被害リスクが高い部分には、設置間隔を詰めるなど危険を回避させる対策が必要です。
また、屋根の形状や勾配によって、雪が一か所に集まらないよう、屋根の中央付近にも設置されることがあります。
雪止めが必要な理由とない場合の3つのリスク
雪がめったに降らない地域だから、雪止めがなくても大丈夫と思いがちですが、それは実は危険な考え方といえます。
雪止めは、稀に起こる大雪や、屋根の形状・素材によって発生しやすい「滑落現象」から家と人を守るために不可欠なのです。
雪止めがない場合の3つのリスク
下記に雪止めをしないとどんなリスクがあるのか解説します。
1.人身事故や物損事故を引き起こす「落雪災害」
雪の塊は見た目以上に重く、固く締まっています。
屋根から落ちる雪は時速数十キロにも達し、非常に大きなエネルギーをもつため、その危険性は甚大です。
• 人に深刻な被害を及ぼす
雪の塊は鋭利な氷を含でいるため落下した場合、歩行者や居住者の頭に当たると重大な頭部外傷や骨折を負わせる可能性があります。たとえ平屋であっても、屋根は人より高い位置にあるため例外ではありません。
• 高額な物損と賠償責任
自宅のカーポートの屋根、給湯器の室外機、太陽光パネルなどを破壊する可能性があります。
特に、隣家の設備(テラス、窓ガラス、給湯器)を破損させた場合、火災保険ではカバーしきれない賠償問題に発展し、多額の費用負担を強いられることになるでしょう。
2.雨樋を破損させ家の寿命を縮める
近年普及している金属屋根(ガルバリウム鋼板など)は表面が滑りやすく、雪が特に滑落しやすい性質を持っています。
雪が屋根から勢いよく滑り落ちると、軒先に設置された雨樋に強烈な衝撃と荷重を一度に加えます。
するとその衝撃で、雨樋が歪んだり金具が破損して抜け落ちてしまいます。そうした事態は頻繁に起こるため注意が必要です。
また、雨樋が壊れると屋根に降った雨水がうまく排水できず、そのまま外壁や軒天を伝って流れ落ちてきます。
その結果、外壁や家の構造材が常に湿った状態になり、腐食やカビの発生、さらには雨漏りを引き起こし、家の寿命を著しく縮めてしまう結果となるでしょう。
3.敷地外へ落屑すると隣人とのトラブルになる
積もった雪が隣家の敷地や公道に大量に流れ込むと、近隣住民の迷惑となりトラブルの原因になります。
特に隣家との距離が近い都市部では、落雪トラブルは深刻化しやすいので注意が必要です。
たとえば、雪の塊が隣家のフェンスや壁に損傷を与えた場合、修繕費用をめぐる金銭トラブルは避けられません。
地域住民との良好な関係を保ちトラブルを未然に防ぐためにも、雪止めは現代の必須マナーと言えるでしょう。
雪止め設置のデメリット
雪止めを設置するメリットは、上記に記述した雪止めが必要な理由とない場合の3つのリスクから考察できますが、雪止めを設置するデメリットはどんなものでしょうか?
以下に説明したいと思います。
デメリットは2つ
① 費用と手間
設置には初期費用(後述)がかかります。
また、屋根工事を伴うため、工事期間中の生活への配慮や信頼できる業者選びが必要です。
② 屋根への負荷と劣化
積雪を屋根の上に留めるため、屋根全体にかかる雪の重みが増加し、建物の躯体に負担がかかります。
また、金具の固定した部分の少しの隙間から雨漏りが発生する可能性も否めません。
対策として、設置前には必ず、建物の耐荷重性を専門業者に確認し、設置時の防水処理(コーキング)を徹底してもらう必要があります。
適切な施工を行う専門業者を選ぶことで、デメリットを極力抑えられるでしょう。
屋根に最適な雪止めの選択・費用と種類
雪止めには、屋根の素材や形状、積雪量に合わせて最適な種類があります。
種類ごとに費用や機能が大きく異なるため、専門家のアドバイスを受けながら、自宅に合ったものを選ぶことが大切です。
雪止めの主な種類と特徴と費用相場
雪止め金具(ストッパー)
設置が最も容易ですが、落雪抑制力は「面で止める」タイプに比べてやや劣ります。
雪止めアングル(L型)
雪の塊を「面」で受け止めるため、金属屋根との相性が抜群です。
ネット・フェンス型
屋根の広範囲を覆う柵状の構造物で、大量の雪を屋根上に保持することが可能です。
費用相場:約 8,000〜15,000円/m以上
設置費用の内訳(後付けの場合)
雪止めを後付けする場合の費用は、主に以下の3要素で構成されます。
- 雪止め金具・アングル本体の費用:種類や材質(ステンレスなど)によって変動します。
- 設置工事費用(技術料):職人の人件費や日当です。
- 足場設置費用:これが最も高額になりがちです。
特に、足場設置費用が全体の総額を大きく左右します。
費用を抑えるポイント
屋根の塗装や葺き替えまたは外壁塗装など、足場が必要な他のリフォームと同時に雪止めを設置することが最も賢明です。
足場代の設置が一度の工事で済みますから、大幅に費用削減ができるでしょう。
後悔しない設置業者選びと注意点
雪止めは命と財産を守るための重要な設備です。
設置不良は肝心な時に役に立たないばかりか、危険が伴うことはご理解いただけたことでしょう。
ですから、適切な施工ができる業者を選ぶことは、長期的な安心につながる重要事項です。
屋根工事専門業者を選ぶ理由
「リフォーム全般」を扱っている業者よりも、屋根工事を専門とする業者に依頼するのは賢明です。
専門業者は、屋根の構造、積雪による負荷の計算、各種屋根材への適切な取り付け方法、そして最も重要な防水処理に関する知識と経験が豊富です。
さらに、設置後の雨漏りリスクを最小限に抑えるには、専門性の高い業者の選択が不可欠といえるでしょう。
見積もりの「内訳」から適正価格を見分ける
「雪止め工事一式:〇〇万円」といった曖昧な見積もりをしてくる業者はやめましょう。
必ず、以下の項目が詳細に記載されているかを確認してください。
• 雪止め金具のメーカー名、品番、材質(耐食性の高いステンレス製かなど)
• 設置箇所と個数またはm数(どれだけの範囲に、どれくらいの密度で設置するのか)
• 足場代(設置の有無と金額。仮設費用は明確に分離されているか)
複数の業者から相見積もりを取り、内訳の明瞭さと提案内容が納得いくものかを比較することで、適正価格を見極められます。
雪止めは絶対に自分で設置しない
「ホームセンターで金具を買ってきて自分で設置する」という考えは絶対にしてはいけません。
雨漏りリスクと命の危険が伴うからです。
• 高所作業の危険性
プロでも細心の注意を払う高所作業であり、転落による重大事故、最悪の場合は死亡事故につながる危険があります。
• 防水性の問題
設置時に屋根材を加工したりビスを打ち込んだりする場合、適切なコーキング(防水処理)がなされないと、数年後に必ずその穴から雨漏りが発生し家全体を傷める原因となります。
雪止めは、専門的な知識と技術さらに安全管理が必須の工事であり、必ずプロの業者に依頼してください。
まとめ
この記事から雪止めに関する理解を深めていただけたのではないでしょうか?
「雪止め」という名称から、雪国だけのものと思いがちですが、雪の少ない地域でも、稀に積もる雪が及ぼす危険に備えないといけない保険のような役割をもっていることがよくわかります。
雪止めを設置することで、雪がドサッと落ちてくることを防ぐ効果があり、また雪を徐々に溶かすのに役立つため排水量もコントロールできました。
その結果、雨どいの破損を守り、近隣の外壁を傷つけるなどの様々トラブルを未然に防げます。
近年の異常気象に備え、雪止めがきちんと設置されているか確かめて、安全な暮らしを維持するようにしましょう。



