セメント瓦とは?特徴や他の屋根材との違い・メンテナンス方法を解説
セメント瓦は、1970年代から1990年代にかけて、とてもよく使用された屋根材です。
セメント瓦の寿命は約30年と言われていることから、何かしらの劣化症状が現れていてもおかしくありません。
今回の記事では、セメント瓦の特徴や使用されなくなった原因、そしておすすめのリフォーム方法についてくわしく解説しています。
屋根の劣化が気になる方は、ぜひ最後まで読んで参考になさってください。
セメント瓦の特徴と他の屋根材との違い
セメント瓦にはどのような特徴があって、他の屋根材とは何が異なるのでしょうか。
屋根の専門家がわかりやすく解説していきます。
セメント瓦の特徴
最近ではあまり聞かなくなったセメント瓦ですが、一体どのような特徴があるのでしょうか。
まず、セメント瓦の製造方法について見てみましょう。
セメント瓦とは、セメントと川砂を主原料として作られます。
瓦の形に成型する際には、モールドと呼ばれる型を使用して圧力をかけることによって固め、乾燥・硬化させます。
仕上げには、防水性能を持たせるためや美しく仕上げるために塗装が施されているのが特徴です。
従来の陶器瓦(粘土瓦・和瓦)と比較するとコストが安いこともあって、1970年代から1990年代頃まで積極的に使用されていた屋根材です。
しかし、耐久性やアスベスト混入の問題などから、現在はほとんど使われることがなくなりました。
セメント瓦と粘土瓦(和瓦)との違い
セメント瓦と粘土瓦の違いは大きく分けて2つあります。
■原料
セメント瓦の主な原料はセメントと川砂です。
一方、粘土瓦は、その名の通り古くから採取されている粘土を材料としています。
セメントは粘土と比較すると水を吸収しやすい性質があります。
ですから、定期的な塗装メンテナンスが必要です。
■製造方法
セメント瓦は原料を混合した後に、モールドと呼ばれる型へ入れて圧力をかけて成形します。
固まった後は、十分に乾燥させることによって、硬化します。
硬化後に塗装をして、セメント瓦の仕上がりです。
粘土瓦は、成形した後に乾燥させ、1,000度から1,300度の高温で焼成して作られます。
焼き締めることで、非常に高い強度と耐久性を持つのが粘土瓦の大きな特徴です。
以上の違いから、セメント瓦は水を吸収しやすく塗装メンテナンスが必要、粘土瓦はメンテナンスがほとんど不要であり、耐久性に優れていることがわかります。
セメント瓦とスレート瓦との違い
セメント瓦もスレート瓦も、実はどちらも主原料はセメントです。
スレート瓦もセメント瓦と同様に、強度を高めるためにアスベストが使われていたことがありました。
しかし、現在ではアスベストは健康被害によって使用が禁止されているため、それに変わる繊維質系の材料を使って強度を保っています。
また、大きな違いとしては「薄さ」が挙げられます。
スレート瓦は1cm未満の薄さに仕上げられていることが多く、セメント瓦と比較すると非常に薄いです。
セメント瓦とモニエル瓦(乾式コンクリート瓦)との違い
セメント瓦と同じく1970年代から1980年代にかけて注目された屋根材が、モニエル瓦です。
主原料は両方ともセメントですが、セメント瓦には川砂が、モニエル瓦には砂利を加えることが大きな違いです。
また、モニエル瓦は表面に着色スラリーというものでスラリー層を作り、耐水性を持たせています。
しかし、モニエル瓦の塗装メンテナンスをする際には、スラリー層を剥がしてから塗装しなければならないため、施工できる業者が限られるというデメリットもあります。
セメント瓦のデメリットについて
1970年代から1990年代には多用された屋根材であるセメント瓦ですが、現在ではほとんど使用されていません。
その理由として挙げられるのが次の3つのデメリットです。
- 耐久性が低く割れやすい
- 色褪せが目立つ
- 苔が生えやすい
それぞれについてくわしく解説していきます。
耐久性が低く割れやすい
セメントと川砂を原料として圧力をかけて成形しているセメント瓦は、衝撃に弱く割れやすいというデメリットがあります。
屋根材がひび割れを起こすと、そこから水が浸入して雨漏りのきっかけになってしまいます。
一方、粘土を焼成して作る粘土瓦の耐久性は約50年とも言われているのに対し、セメント瓦は約30年程度と短いです。
また、定期的に塗装メンテナンスを行わなければ、セメント瓦の寿命はもっと短くなるため、コストもかかります。
苔が生えやすい
セメント自体は水を吸収しやすい性質を持っているため、塗装メンテナンスを怠ったり、キズやひび割れを放置したりするとセメント瓦が水を吸い込みます。
そのため苔が生えやすく、放置することで苔も水を吸収して、屋根の下地材を傷めるなど悪循環に陥ってしまいます。
色褪せが目立つ
屋根は、住宅をさまざまな気象条件から守ってくれる大切な部分です。
年中、風雨や強い紫外線にさらされるうちに、セメント瓦の表面を覆っている塗膜は色褪せが目立つようになります。
色褪せは住宅の外観を損ねるだけでなく、塗装メンテナンスの合図とも言えるのですが、そのまま放置されている家も多く見られるのが現状です。
色褪せから始まって塗膜の剥がれ、セメント素材自体が表面に現れてしまうと、劣化も早まります。
屋根は目が行き届きにくく、ひび割れや苔、色褪せが放置されがちです。
住宅の外観だけの問題ととらえず、定期的な点検を受けて適切な時期にメンテナンスをするようにしましょう。
セメント瓦のリフォーム方法
セメント瓦は、定期的なメンテナンスが必要な屋根材であることがわかりました。
では、実際にどのようなリフォーム方法があるのか、具体的に見ていきましょう。
部分修理
粘土瓦やスレート瓦であれば、部分的に傷んでいる場所が見つかれば、同じ瓦を使って差し替えや修理を行えます。
しかし、現在ほとんど生産されていないセメント瓦は、同じ瓦を見つけることが難しく、部分的な修理ができません。
ひび割れた瓦が見つかったとしても、シーリング材や粘着テープ等で貼り付けておくしかないのが現状です。
異常気象や暴風、突風が多い昨今、応急処置した場所がもう一度破損することは容易に想像できるため、セメント瓦の部分的な修理はおすすめできません。
塗装
セメント瓦の寿命は約30年と言われています。
塗膜を良い状態に保つためには、苔の発生や色褪せがひどくなる前に塗装によるリフォームを行いましょう。
定期的に洗浄と塗装をすることで、セメントが表面に現れることを防ぎ、セメント瓦の寿命を延ばせます。
しかし、適切な時期を逃して苔の発生や塗膜の剥がれが起きてしまった場合は、塗装によるリフォームでは対応しきれないことも考えられます。
また、未熟な屋根業者に依頼してしまうと、セメント瓦とモニエル瓦の区別がつかず、塗装のメンテナンスが無駄になってしまうケースもあります。
モニエル瓦の塗装前には「スラリー層の除去」が必要です。
除去せずに上から塗装リフォームをしても、何の意味もありません。
瓦の種類をきちんと見分けられる、信頼できる屋根業者へ依頼するようにしましょう。
葺き替え
セメント瓦の劣化が激しく状態が悪い場合は、瓦の葺き替えしか方法はありません。
屋根材をすべて交換する葺き替えは費用がかかるリフォームですが、屋根の下地材に雨水が浸入して腐食や雨漏りにつながる前に手入れをするのがおすすめです。
セメント瓦はほとんど生産されていないため、葺き替える場合には屋根材を選ぶことから始まります。
セメント瓦と比較して、軽量だったりメンテナンス性に優れていたりする屋根材はたくさんあります。
特に、金属製のガルバリウム鋼板屋根や、同じセメントを原料としつつ繊維系の材料で強度を持たせたスレート瓦に葺き替えるパターンが費用面からみてもおすすめです。
まとめ
セメント瓦の特徴や葺かれた時期を考えると、瓦自体の寿命が訪れている可能性は十分考えられます。
解説してきたセメント瓦のデメリットや特徴から、現在までメンテナンスしていない際には葺き替えリフォームの検討が必要かもしれません。
屋根は住まいをさまざまな天候や飛来物から守る、重要な部分です。
定期的な点検を受けて、健やかな住環境を維持してください。