屋根のリフォーム工事とは?屋根材別の劣化症状と工事方法を解説
屋根は住宅を守ってくれる重要な部分です。ところが屋根は外壁や内装と違って見えにくく現状を把握するのが難しい場所といえます。
「屋根のメンテナンスをしたいけれどどうすればいいのか」「具体的な屋根の工事方法について知りたい」と悩んでいる方はたくさんいらっしゃいます。
そこで今回の記事では、屋根のリフォームが必要となる劣化症状や、屋根のリフォーム工事の種類についてくわしく解説していきましょう。
屋根の役割
あるのが当たり前と思っている屋根ですが、屋根はどのような役割を果たしているのでしょうか。
屋根の役割についてくわしく見ていきましょう。
屋根は自然環境から家を守っている
屋根のもっとも大きな役割は雨や風、日差しによる紫外線から建物を守ることです。
特に日本の従来工法で建てられた木造住宅は湿気が苦手。水分を建物内に入れないことが住宅の寿命に大きく関わってきます。
上から降ってくる雨をスムーズに排水して、建物の外壁へのダメージを最小限にするように屋根は設計されているのです。
室内を快適に保ってくれる
室内が快適な環境にあるのは、屋根の断熱性のおかげです。
夏は暑い日差しを直接浴び、冬は積雪も経験する屋根の断熱性能を高めることで、室内が外気温の影響を受けにくくなります。
また遮音性が高い屋根材を使うことによって、屋根は大雨や激しい気象現象の音を和らげてくれます。快適な室内環境づくりに屋根は欠かせない存在です。
住まいの外観イメージを高める
住宅の外観イメージは屋根の形状や素材によって大きく変化します。住まいの外観を眺めてみると、屋根が占める割合の大きさに気づくことでしょう。
そのため屋根が汚れていると、住まい全体が劣化した印象になりがちです。機能面だけではなく視覚的な面でも屋根の果たす役割は大きいといえます。
屋根材別の気をつけたい劣化症状
屋根が住宅のなかで大切な役割を持っていることがわかりました。そこで次に気をつけたい屋根の劣化症状について、屋根材別に解説していきます。
このような症状が現れている場合は、できるだけ早めに専門業者へ屋根の点検やリフォーム工事を依頼することをおすすめします。
粘土瓦屋根
釉薬瓦やいぶし瓦など粘土を主な材料としている粘土瓦は、耐久性が高い屋根材です。しかし全くメンテナンスが必要ないわけではありません。
粘土瓦屋根の注意したい劣化症状について解説します。
■棟瓦の土台のゆるみ
棟瓦と呼ばれる粘土瓦屋根の頂上に位置する瓦は、葺き土と漆喰によって固定・防水されています。
寿命が長い粘土瓦と比較すると、葺き土や漆喰の寿命は約10年。定期的なメンテナンスを行わなければ、棟瓦の土台が崩れて棟瓦自体のゆがみやずれへと進行してしまいます。
雨漏りを防ぐ役割がある棟瓦がゆがむと、屋根の下地材まで雨水が侵入して腐食につながりかねません。
10年を目安に棟瓦の土台のリフォーム工事をすることで、粘土瓦屋根の寿命を伸ばすことができます。
■瓦のずれや欠け
最近は激しい気象現象が頻発するようになり、屋根にとって厳しい環境が多いです。
焼き締められた粘土瓦は非常に丈夫ですが、台風や強風の飛来物の衝撃で割れたり、ずれたりしてしまうことは十分考えられます。
瓦の割れやずれを放置しておくと、すき間から雨水が入り込み建物本体の腐食につながります。
定期的なメンテナンスに加えて、大きな台風などの後には専門業者に点検を依頼するようにしましょう。
ガルバリウム屋根
軽量でさまざまなデザインに加工しやすいガルバリウム屋根は、地震が多い日本で注目されている屋根材です。
耐久性が高いガルバリウム屋根ですが、鉄の表面にメッキ塗装を施しているため、定期的なリフォーム工事が必要です。
ガルバリウム屋根の劣化症状を見ていきましょう。
■錆の発生
ガルバリウム屋根は鉄を主原料としており、「アルミニウム、亜鉛、シリコン」を混合したメッキ塗装で仕上げられています。
塗装の耐久性は高いのですが、飛来物などによって衝撃を受けるとその部分に傷がつき、錆が発生することがあります。そのまま
放置すると次第に錆の範囲が広がり、屋根材全体の劣化につなることも。定期的な点検と塗装工事によってガルバリウム屋根を長く使い続けましょう。
■色あせ
メッキ塗装によって屋根材の機能を保っているガルバリウム屋根に色あせが見られ始めたら、リフォーム工事の時期だと考えられます。
色あせは住宅の外観イメージを損ねるだけでなく、塗装が弱ってきている現れです。
錆や腐食につながる前にリフォームすることで、屋根材の寿命を伸ばすことができます。
スレート屋根
他の屋根材と比較するとリーズナブルで軽量なスレート屋根は、日本でもっとも使用されている屋根材です。
初期費用は安くて済むのですが、他の屋根材以上に塗装によるリフォーム工事が重要です。
■瓦のひび割れや欠け
スレート屋根はセメントを材料とした薄くて軽量な屋根材です。そのためひび割れや欠けが生じやすく、美観を損なうだけでなくこまめな補修が必要です。
ひび割れや欠けをそのままにしておくと、屋根の下地材への雨水の侵入を許してしまい、大がかりな屋根リフォーム工事が必要となってしまいます。
■カビや苔の発生
スレート屋根はセメントが主な原料です。成型したスレート屋根に塗装することで防水性能が付与されています。
経年劣化によってスレート屋根の塗装が劣化すると、防水性が失われて屋根材自体にカビや苔が発生してしまいます。
カビや苔は水分を溜めておける性質があるため、繁殖が進み屋根全体の劣化が抑えられません。定期的に塗装し直すことで、スレート屋根を長く使い続けることへつながります。
屋根リフォーム工法の種類
どのような屋根材であっても、経年劣化や飛来物の危険性がありリフォーム工事が必要なことがわかりました。
屋根のリフォーム工事は大きく分けて次の3種類があります。
- 部分的な補修工事
- カバー工法
- 葺き替え工事
一般的に1→3の順に工事費用は高額になります。
部分補修工事
屋根の定期的な点検やメンテナンスを行っていれば、部分的なリフォーム工事で屋根材を使い続けられます。
■塗装工事
粘土瓦屋根には必要ありませんが、その他のガルバリウム屋根やスレート屋根は定期的な塗装工事を行わなければなりません。
塗装によって屋根の防水性や断熱性を保っているため、塗膜が薄くなったり剥がれたりすることで屋根の性能が落ちてしまいます。
汚れを落として塗装する工事であれば、工期も短く費用も安く住むのが特徴です。
■瓦の差し替え
粘土瓦屋根やスレート屋根では、破損した瓦のみを部分的に差し替えることができます。飛来物の衝撃で傷ついた瓦を早めに補修することで、屋根の下地材を守りましょう。
カバー工法
屋根のカバー工法とは、今ある屋根の上に新しい屋根を設置する工法です。既存屋根の撤去・廃材処理費用が不要なため、葺き替え工事と比較すると費用を抑えられることが大きなメリットです。
また既存の屋根によっては葺き替えが難しく、カバー工法でしか対応できない場合があります。
2004年より前に製造されたスレート屋根には、健康被害が報告されている「アスベスト(石綿)」が含まれている可能性が高いです。
この時期に製造されたスレート屋根の処分は慎重に行う必要があり、工事費用や工期も長くなります。
アスベストが含まれている可能性があるスレート屋根に対してのリフォーム工事は、カバー工法で行われることがほとんどです。
屋根材の経年劣化や外観の雰囲気を変えるための屋根全体のリフォーム工事。コストを抑えたい場合にはカバー工法がおすすめです。
葺き替え工事
屋根のリフォームのなかでもっとも大規模なのが、屋根の葺き替え工事です。今ある屋根材をすべて撤去し、屋根の下地材や防水シートなどすべてを新しくする工事です。
一般的な木造住宅の屋根は、小屋組と呼ばれる住宅の構造部分の上に野地板(のじいた)という部材が設置されています。
つまり住宅の構造→野地板→防水シート→屋根材の順で施工されているのです。
このすべてを新しくするため、屋根の防水性能や断熱性能は必ず向上します。
また葺き替え工事を検討するうえで、現在の屋根材より軽量な屋根を選ぶのがおすすめです。
軽量な屋根材を使用すると住宅全体の重心が下がります。屋根のリフォーム工事によって、地震の揺れに強い(耐震性が高い)住宅が手に入ります。
まとめ
当たり前の存在と感じている屋根の役割や屋根材別の劣化症状、そしてリフォーム工事の種類についてご紹介してきました。
屋根の劣化症状に早く気づき、点検や工事をすることで、屋根の寿命を伸ばすことができます。
屋根材の経年劣化や住宅の外観イメージを一新したいときには、カバー工法や葺き替えなどのリフォーム工事を検討するのがおすすめです。
屋根の性能が向上して、今まで以上に快適に暮らすことにつながるでしょう。