知っておきたい!屋根のカバー工法の基礎知識とメリット・デメリット
屋根のリフォームを考える時期に差しかかると、気になるのが「カバー工法」と「葺き替え」の違いです。
今回の記事では富山県で多数の屋根リフォーム実績を持つ当店が、屋根のカバー工法の基礎知識とメリット・デメリットについてわかりやすく解説していきます。
屋根のリフォームを考えている方には必見の内容となっています。ぜひ最後までお読みください。
屋根のカバー工法の基礎知識
屋根の「カバー工法」とは、既存の屋根材を撤去せずに防水シートと新しい屋根材を重ねて固定する方法です。
他にも「重ね葺き」や「カバールーフ工法」とも呼ばれることもあります。
一方、屋根の「葺き替え」は既存の屋根材を撤去してから新しい屋根をのせかえる方法です。
ここでは、屋根のカバー工法の特徴についてご紹介していきましょう。
屋根のカバー工法とは?
屋根のカバー工法は解体や廃材処理がほとんど不要なため、葺き替え工事と比べるとコストが安いという特徴があります。
特に2004年以前に施工されたスレート屋根はアスベスト(石綿)を含むものがほとんどで、葺き替えようとしても解体が難しく廃材処理費用が高額になるという問題を抱えています。
屋根カバー工法であれば既存の屋根材は撤去しないため、この時期に施工されたスレート屋根の経年劣化に対応しやすい工法だといえるでしょう。
屋根の劣化が気になるけれど、短期間で費用を節約しつつリフォームしたいという方におすすめの工法です。
カバー工法が使えない屋根とは?
屋根のカバー工法はすべての屋根のリフォームで使える工法ではありません。
経年劣化で屋根の下地材まで傷んでいる場合は、屋根材を撤去して工事する葺き替えをおすすめします。
また、カバー工法はスレート屋根や金属屋根のようにフラットな屋根材の上からのみ施工が可能です。
瓦屋根のように波打っている形状の屋根材へはカバー工法は使えません。
屋根のカバー工法の手順
屋根カバー工法の特徴について理解が深まりましたでしょうか。
ここからは、具体的な屋根のカバー工法の施工手順をご紹介していきましょう。
1.棟板金の撤去
棟板金とは、屋根の一番高い位置に取り付ける屋根の部材です。屋根材のつなぎ目にかぶせるため、尖った「ヘの字」型をしているのが特徴です。
屋根のカバー工法では、棟板金とその下地にあたる貫板を撤去します。また雪止めが設置されている場合にはこちらも撤去します。
屋根のカバー工法における廃材は、棟板金、貫板、雪止めのみで済むため、解体費と廃材処理費の節約が可能です。
2.ルーフィング工事
次に、既存の屋根の上に「アスファルトルーフィング」と呼ばれる防水紙を設置します。
この防水紙は、屋根材だけでは完全に防ぐことができない雨水の侵入から家を守る働きを持っています。
3.新しい屋根材の設置
防水紙の上に新しい屋根材を設置します。屋根カバー工法で主に使われる屋根材は、ガルバリウム鋼板を代表とする軽量の金属屋根です。
屋根の重量が重くなると住宅の耐震性が低くなることが懸念されます。
カバーする屋根材に軽量の金属屋根を使うことで、家の耐震性能を下げることなく新しい屋根に仕上げられるでしょう。
4.貫板・棟板金の設置
屋根材を固定した後に、新しい貫板と棟板金を設置します。棟板金の下地材である貫板はまだ木製が主流ですが、腐食に強い樹脂製の商品も選択肢の一つです。
5.コーキング処理
新しく設置した棟板金の合わせ目から雨水が侵入しないように、すき間にコーキング処理をします。コーキングが固まれば屋根カバー工法工事の完了です。
屋根のカバー工法のメリット
屋根のカバー工法の特徴と施工の手順についてご紹介してきました。
屋根のカバー工法には今までご紹介してきた以外にどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは屋根のカバー工法を採用するメリットについて解説していきましょう。
メリット① 屋根の性能が向上する
屋根のカバー工法を用いると、既存の屋根を撤去せずに工事することで屋根材が二重になります。
そのため、「住宅の屋根から聞こえる雨音が静かになった」「屋根からの暑さ、寒さを感じにくくなった」など、屋根の断熱性、遮音性などが向上するメリットがあります。
メリット② 葺き替えと比べてリフォーム費用が安い
屋根の葺き替え工事では、解体費や廃材を処理する費用がかかります。一方、屋根カバー工法で発生する廃材は棟板金や貫板などに限られます。
そのため葺き替えと比べるとリフォーム工事費用が安くなることも、屋根カバー工法のメリットです。
メリット③ リフォームの工期が短い
屋根カバー工法は、葺き替え工事よりも工期が短いこともメリットです。
屋根をリフォームする際には、高所に必ず足場を組まなければなりません。工事期間中は窓を開けづらく、部屋が暗いといった不便を感じます。工期が短くなることで不便な生活を送る時間も少なくなります。
また、リフォーム工事の期間が短くなることで人件費が削減でき、屋根リフォーム費用の節約につながるでしょう。
メリット④ 騒音やホコリが少ない
屋根のリフォーム工事では騒音やホコリの問題がつきものです。しかし、屋根材を撤去しないカバー工法では、騒音やホコリは葺き替え工事と比較するととても少なくて済みます。
ご自身やご家族だけではなく、近隣の住宅へかける迷惑が少ないことは大きなメリットといえるでしょう。
メリット⑤ アスベストの飛散リスクがない
2004年以前に施工されたスレート屋根は、アスベストが含まれている製品がほとんどです。
アスベスト(石綿)は人体にとって有害な物質であり、現在では全面的に使用が禁止されています。
そのため、アスベストを含んだスレート屋根を撤去、廃棄するには、定められた安全対策を取らなけらばなりません。
屋根のカバー工法であれば、既存の屋根材を解体せずその上から施工することで、アスベストの飛散リスクがなく工事費用も抑えられます。
屋根のカバー工法のデメリット
費用が抑えられ、アスベストの飛散リスクないとメリットが多い屋根のカバー工法ですが、やはりデメリットもいくつか見られます。
屋根のカバー工法のデメリットについてもしっかりと理解しておきましょう。
デメリット① 屋根の重量が重くなってしまう
屋根のカバー工法は、既存の屋根材を残して上から新しい屋根材を施工する方法です。屋根材が二重になることで、屋根全体の重量が重くなるというデメリットがあります。
屋根が重くなると住宅の構造部分へ負担がかかり、住宅の耐震性が低くなってしまいます。
そのため、屋根カバー工法で用いる新しい屋根材を軽量の金属屋根(ガルバリウム鋼板)にするなどの工夫が必要です。
デメリット② 瓦屋根への施工は難しい
屋根のカバー工法は、既存のフラットな屋根材の上に新しい屋根材を固定していきます。そのため、波形の形状や厚みのある屋根材へは、屋根のカバー工法を使った施工は難しいといえるでしょう。
陶器製の日本瓦の屋根にはカバー工法は向いていないため、葺き直しや葺き替え工事をおすすめします。
デメリット③ 屋根の劣化状態によっては向いていない
木造住宅の屋根は、住宅の構造部分である小屋組みに「野地板」という屋根を葺くための下地材を貼って施工されています。
屋根の経年劣化によっては、防水性能が低くなって野地板にまで雨水が侵入、腐食している可能性も考えられます。
屋根の下地材まで劣化している場合には、カバー工法で屋根材だけを新しくしても内部の腐食が進み住宅の構造にも影響を及ぼしかねないでしょう。
また、既存の屋根材の劣化が激しい際も、同じくカバー工法でのリフォームはおすすめできません。
スレート屋根の劣化が進み、割れや欠け、水を含んで苔などが繁殖しているなどの症状が見られることがあります。このような屋根材の上へは新しい屋根材は固定できません。
屋根の劣化状態によっては、カバー工法ではなく早めの葺き替え工事が必要と考えます。
まとめ
さてここまで、屋根のカバー工法についての「基礎知識」と「知っておきたいメリット、デメリット」について解説してきました。
屋根のカバー工法は、解体や撤去に費用がかかる2004年以前に施工されたスレート屋根のリフォーム工事に、とても有効な工法であることがわかりました。
また、瓦屋根以外の屋根材のリフォームでは、屋根のカバー工法はリフォーム費用を抑えるという大きなメリットがあります。
屋根は住宅を自然環境から守る大切な役割を果たしています。
屋根の定期的な点検や修繕を専門家に依頼することで、よりよい住環境を保ちながら暮らしていきましょう。